欧州議会の国際貿易委員会、対米通商交渉開始を条件付きで承認

(EU、米国)

ブリュッセル発

2019年02月21日

欧州議会国際貿易委員会(INTA)は2月19日、対象を工業品に絞った米国との通商協定に関する交渉権限を欧州委員会に付与する指令案を賛成21、反対17(棄権1)で承認した。3月には、同議会本会議でも採決を行い、EU理事会での承認も得られる見通し。最終的に付与された交渉権限に基づき、欧州委員会が対米交渉を開始する。

緊張緩和の重視姿勢だが、対米通商協定交渉には慎重論も

欧州委は、米国通商代表部(USTR)との協議を加速するため、「上級作業グループ」(2019年1月31日記事参照)を立ち上げているが、正式な交渉開始には欧州議会やEU理事会の承認が必要となる。

欧州議会も、米国との通商関係の緊張状態の緩和・解消をEUの権益として重視する姿勢だが、今回の採決における票差が物語るように、対米通商協議についてはEU側の慎重論も根強い。このため、INTAは対米交渉開始を承認する前提として、下記5条件を付している。

  1. 米国側が、鉄鋼およびアルミニウムに対する暫定的な追加関税賦課を解除すること
  2. (対米通商協定についての)持続可能性影響評価や(EU側)市民社会との包括協議を実施すること
  3. 交渉対象に、自動車を含め、農産品は除外すること
  4. 米国が新たな追加関税賦課を行う場合、交渉を停止すること
  5. 貿易上の特恵を得るために求められる原産地規則についての明確性が、交渉の中で対処されること

(前田篤穂)

(EU、米国)

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