中南米進出日系企業調査、2019年見通しに明るさ見えるブラジル

(ブラジル)

米州課

2019年02月12日

ジェトロが2月7日に発表した「2018年度中南米進出日系企業実態調査」では、政権交代などの不透明感や国際環境から、多くの国の日系企業が今後1~2年間の事業展開の方向性について慎重な姿勢を示した。そんな中、例外的に進出企業の見通しに明るさが見えたのがブラジルとコロンビアだ。

特にブラジルでは、今後1~2年の事業展開の方向性に関して、拡大すると回答した割合が前回調査と比べて調査対象国の中で唯一増加した。2019年の営業利益見込みが前年に比べて改善すると回答した割合は57%と、コロンビア(61.1%)に次いで2位だったが、この設問で「改善」と回答した比率から「悪化」とした比率を引いたDI値では、46.9ポイントと調査対象国で首位となった。

今後の事業展開拡大の理由としては、「現地市場での売上増加」(88.6%:複数回答。以下同じ)がトップだった(添付資料表参照)。

なお、前回調査と比べて回答率が伸びたのは、「高付加価値製品・サービスへの高い受容性」(24.5%→29.5%)だった。これらを踏まえ、具体的にどの機能を拡大・強化するのかという問いに対しては、「販売機能」(86.4%)が最も多く、次いで「生産(高付加価値品)」(20.5%)が続いた。

2018年10月の大統領選挙では当初、左派政権への回帰の可能性が懸念され、通貨レアルが売られたが、右派でプロビジネス的な政策を打ち出していたボルソナーロ氏(現大統領)が優勢になってから、レアルはドルに対して強含みで動いた。これによりインフレ、金利の安定と国内市場の先行きに明るさが見えた。

労働法改革への評価は高いが雇用増加には慎重姿勢

テーメル前政権時の2017年11月に統合労働法が約70年ぶりに大幅な改正となった。過度な労働者保護と時代に合わない項目の改正により、進出日系企業からは高く評価された。ブラジルの投資環境面の「リスク」についての設問で、「労働争議・訴訟」を挙げた企業の割合は前回調査の65.7%から48.1%に低下し、リスク項目の順位も同4位から8位に下げた(添付資料図参照)。

ただし、2018年11月の本調査時点で法施行から2年経過しておらず、訴訟の時効(2年間は旧労働法適用)が残っていたり、判例を見極めたいという企業が多いことなどを背景に、現段階で積極的に現地従業員を雇用する動きには結び付いていないようだ。今回の調査で現地従業員を今後「増加」させると回答した割合は、32.5%と前回調査時(32.3%)とほとんど変化がなかった。

(竹下幸治郎)

(ブラジル)

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