仏独イノベーションミッション、ドイツでは既存産業デジタル化に焦点

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2019年02月15日

ジェトロは2月4~8日にイノベーションミッションを派遣、前半のフランス(2019年2月14日記事参照)に続き、7~8日に開催されたドイツでのプログラムでは、国内最大の人口と経済規模を有するノルトライン・ウェストファーレン(NRW)州を訪問した。同州はデジタル化推進の一環として、スタートアップ支援を積極的に推進している。ドイツ連邦スタートアップ連盟などが毎年発表している調査によれば、NRW州のスタートアップ数は、2018年にベルリンを超え、ドイツ最大となった。

初日は州内最大のスタートアップイベント「デジタル・デモ・デー」を視察。製造関連を中心に、バーチャルリアリティー(VR)や拡張現実(AR)、ロボティックス、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)、ブロックチェーン、サイバーセキュリティーなどの技術を持つスタートアップの出展企業と意見交換を行った。

写真 デジタル・デモ・デー視察の様子(ジェトロ撮影)

デジタル・デモ・デー視察の様子(ジェトロ撮影)

ルール工業地帯の中核都市エッセン市では、同市とジェトロが主催するスタートアップ・エコシステム・セミナーを開催。政府が設置する石炭産業に関する諮問委員会が2038年までに石炭火力発電所を全廃する答申を1月にまとめるなど、産業や雇用の変革が推し進められる中、セミナーでは、世界的な鉄鋼大手ティッセンクルップなど既存の地元大手企業と連携してスタートアップ支援を行い、構造改革を目指すエッセン市の取り組みや、エネルギー関連スタートアップとの連携を進める電力大手イノジーの事業などが紹介された。鉄鋼プラントや機械設備の総合メーカーSMSグループの社内ベンチャーであるSMSデジタルの訪問では、既存産業のデジタル化に焦点を当て、課題や人材育成、スタートアップを巻き込んだプラットフォームビジネスの展開などが議論された。

最終日の2月8日には、アーヘン工科大学(RWTH)を中心にイノベーションの創出の地となっているアーヘン市を訪問。開催されたセミナーでは、大学と企業間の連携により研究成果が迅速に商業化できる環境を紹介。日系企業の事例として、デンソーのドイツ拠点担当者が登壇、具体的な産学連携の事例を紹介した。また、応用研究機関のフラウンホーファー生産技術研究所(IPT)やアーヘン工科大学繊維工学研究所(RWTH ITA)などが設立したデジタル・ケイパビリティー・センター(DCC)アーヘンを訪ね、インダストリー4.0の最新の研究動向の説明を受けた。電気自動車(EV)スタートアップであるe.GOの視察では、大量生産に向けた取り組みや同社EVを活用した将来の街づくりのコンセプトなどが紹介された。

参加者からは、「他の地域に比べて、既存の生産課題の解決に焦点を当てるなど、地に足の着いたスタートアップが多いように感じた」「スタートアップやデジタル化の動向について、効率的に視察することができた」といった声が聞かれた。

(森悠介)

(ドイツ)

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