ブラジル政府、社会保障制度改革法案を提出

(ブラジル)

サンパウロ発

2019年02月28日

ブラジル政府は2月20日、連邦議会に社会保障制度改革法案を提出した。同改革は財政収支赤字の拡大を抑制するには不可欠といわれていたもので、財政再建を目指すボルソナーロ政権の初年度の最重要課題と目されている。

ブラジルの人口動態をみると、出生率が低下する一方で高齢者の寿命が延び、高齢化社会に着実に向かっている。65歳以上人口の15~64歳人口に対する割合は2018年時点で13.3%だが、2060年には42.6%へ上昇するとみられている。政府資料によれば、2018年の社会保障制度会計赤字額は2,660億レアル(約7兆9,800億円、1レアル=約30円)とGDPの4~5%に相当する水準にある(表参照)。つまり、ブラジルは本格的な高齢化社会を迎える前に、ブラジルの会計は大幅な赤字を抱え、国庫財政を圧迫する要因になっている。

ブラジルの社会保障制度は、主に4つに分かれている。最大は民間企業の労働者らが加入する、一般社会保障制度(RGPS)における都市労働者向け制度、もう1つはRGPSにおける農村労働者向け制度、そして連邦公務員向け制度(RPPS)と軍人向け制度だ。中でも、農村労働者向け制度の赤字額は1,140億レアルと最大だ。今回の改正法案の主なポイントはRGPSとRPPSで税率表を統一し、連邦公務員の相対的な厚遇を是正しつつ高所得者により多くの負担を求めること、年金受給開始要件の引き上げ、障害者年金、遺族年金や社会扶助給付金(BPC)といった制度の改定だ。なお、新制度には移行期間が設けられ、将来、選択制による確定拠出型年金制度の利用も見込んでいる。

表 ブラジルの社会保障制度会計の概要(2018年)

政府の資料では、同改革法案が通れば、4年間で1,610億レアル、10年間で1兆724億レアルの社会保障費の節減が見込めるとしている。なお、可決に向けて、憲法改正法案(下院での法案呼称はPEC 6/2019)となるため、下院、上院ともに本会議採決で議席数5分の3以上(下院は513議席中308議席以上、上院は81議席中49議席以上)の賛成票を得る必要がある。政府としては早期の可決を目指す方針だが、議会対応への注力が求められている。

(二宮康史)

(ブラジル)

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