本社と現地法人の双方で草案確認を

(中国)

北京発

2019年02月01日

ジェトロが北京市で開催した進出企業支援セミナーの2回目。北京市大地法律事務所の熊琳パートナー弁護士が解説した「外商投資法(草案)」の概要、注目すべきポイントを紹介する。

技術導入側の強制的な継続使用権は廃止

「外商投資法(草案)」の第22条では、自由な協議という原則により、技術提携の条件を決めることができるとされている。このまま施行されれば、「中外合弁企業法実施条例」第43条第2項で規定されている技術譲渡協議の条件(10年を超えない技術譲渡協議の期間満了後、技術導入側が当該技術の継続使用権を有する)が廃止されることになるが、技術提携条件を決める商談がより重要になる。

法による商会、協会の設立について

第26条では、外国投資者、外資系企業は、法により商会、協会の設立と参加により、自らの適法な権益を維持・保護できることが規定されている。現在は、中国における外国の商工会は、外国商会管理臨時規定により、1国について1つの商会しか認められていないため、中国日本商会を除く、各地の多くの日系商工会組織は未公認組織となっている。「外商投資法」の施行により、各地の日系商工組織の登記が可能となれば喜ばしいが、実際に登記が可能となるよう細則で規定されるか注目される。

外商投資に関する情報報告制度が確立される

第31条では、外商投資の情報報告に関する制度を確立し、報告の内容と範囲は、十分な必要性と厳格制御の原則により確定するものとされている。報告義務の主体は、外国投資者または外商投資企業となっており、本社と現地法人がともに報告義務を負う可能性がある。同法草案の内容だけでは具体的な規定が分からないため、実施細則に注目する必要があるが、2015年の「外国投資法(草案)」で詳細に規定されていた情報報告制度の概要が参考になるだろう。

第33条では、外商投資安全審査制度を確立し、国家安全に影響を及ぼす可能性のある外商投資に対し、安全審査を実施することが規定されている。また、安全審査の決定は最終決定とすることも規定されており、司法救済はできない。

定款の見直しが必要に

第39条では、「外商投資法」施行後5年間は過渡期として、外資3法に基づき設立された外資系企業の組織形態を維持できるとされているが、その後の外資系企業の登記の方法は明確に示されていない。外資3法廃止により中外合弁経営企業法で規定されていた、中外合弁会社の最高意思決定機関(董事会)と法定代表者(董事長)は、会社の定款で規定することとなり、また、董事の任期は中外合弁経営企業法の定める4年から会社法の定める3年以内に変更になる。各社の自主的な政策決定権限が拡大され、会社の定款で決めることが増えるため、自社の定款の内容が新法に適応する内容であるかの確認が必要となる。

「外商投資法(草案)」は、原則的な内容になっており、移行期間の間に実施細則などが随時公布されることが見込まれる。「外商投資法」の施行は、日本の本社と現地法人のいずれに対しても重要な影響をもたらすことから、本社と現地法人の双方で草案をよく確認し、意見を出すとともに、草案の今後の審議や修正、正式公布の動きに注目を要する。

(日向裕弥)

(中国)

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