2018年のGDP成長率は4.7%、個人消費や純輸出が下支え

(マレーシア)

クアラルンプール発

2019年02月27日

マレーシア中央銀行と統計局は2月14日、2018年第4四半期(10~12月)の実質GDP成長率を前年同期比4.7%と発表した。5四半期ぶりの加速となったが、成長率は4%台にとどまった(表1参照)。同時に発表された2018年通年の実質GDP成長率は第4四半期と同じ4.7%で、2017年の前年比5.9%から1.2ポイント低下し、2018年11月に下方修正された中央銀行の予測値4.8%をわずかに下回った。第3四半期にマイナスだった純輸出はプラスに寄与したものの、民間投資の鈍化が影響した(図参照)。

個人消費が引き続き成長の牽引役

第4四半期のGDPを需要項目別にみると、引き続き成長の牽引役である個人消費は前年同期比8.5%増で、2018年9月1日から導入された売上税・サービス税(SST)の影響は軽微だった。安定した賃金上昇と、2018年通年では前年比1.0%上昇となった低いインフレ率が後押しした。民間投資は4.4%増で、前期(6.9%増)から減速した。公共投資の低迷に伴い、設備投資を控える動きがあったものとみられる。政府消費はプラス成長を維持したものの前期比1.2ポイントの減速、公共投資は5四半期連続のマイナス成長となった。他方、輸出が好転し、純輸出は前年同期比9.9%増に回復した。

表1 需要項目別実質GDP成長率〔前年(同期)比〕の推移
図 実質GDP成長率と項目別寄与度の推移(前年同期比)

製造業の好調と鉱業の回復が押し上げ要因

第4四半期GDPを産業別にみると、サービス業と製造業がそれぞれ6.9%増、4.7%増と引き続き成長を牽引した(表2参照)。主要産業である電気・電子製品は6.9%増と前期から加速した。背景には、米中貿易摩擦における関税引き上げを前に、需要が伸びたことがある。農業は、悪天候によるパーム油やゴムの減産が響き、3四半期連続のマイナス成長となった。鉱業は、2018年1月に発生した東マレーシアにおける天然ガスのパイプライン破損以降、不振が続いたが、2018年第4四半期に復旧し、回復の兆しがみられる。

表2 産業別GDP成長率の推移〔前年(同期)比〕の推移

2019年の見通しは成長率がやや鈍化

2018年のGDPは需要面では公共部門、産業面では農業や鉱業の落ち込みが成長を下押しするかたちとなった。2019年の先行きについて、政府系シンクタンクのマレーシア経済研究所(MIER)のザカリア・アブドゥル・ラシド所長は、長年にわたり経済成長の牽引役が個人消費のみに偏っている点に警鐘を鳴らしており、「(個人消費以外の)新たな牽引役を探さなければ、今後の経済成長の鈍化を引き起こす可能性がある」と指摘した。ラシド所長は、2019年通年の経済見通しを、2018年より0.2ポイント低い4.5%と予測した。

(エスター頼敏寧)

(マレーシア)

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