ウランバートル市の住宅価格は安定傾向

(モンゴル)

北京発

2019年02月22日

モンゴル国家統計局の1月15日の発表によると、2018年第4四半期のウランバートル市中心部6区における平均アパート価格(注1)は、前年同期比0.1%の下落で、ほぼ前年並みの水準を保った(図参照)。

図 ウランバートル市中心部の平均アパート価格の推移(2008年第4四半期を100とする価格指数)

ウランバートル市のアパート価格は、モンゴルの資源バブルにより不動産市場が活況だった2011~2012年と、政府の住宅ローン政策(8%の優遇金利、注2)により住宅購入需要を喚起した2013~2014年には急騰した。2015年以降は、石炭価格低下の影響でアパート価格が下落に転じたものの、IMFの支援を受けた2017年以降は価格が下げ止まりつつあり、資源輸出が好調だった2018年には一部の地区で上昇に転じた。

アパート価格の前年同期比を区ごとにみると、最も下落率が大きかったのはソンギノハイルハン区の「1970~2001年築」で0.5%下落し、最も値上がり率が大きかったのはハンオール区の「2002年以降築」で1.1%上昇した(表参照)。

表 2018年第4四半期のウランバートル市の地区別・建築年別アパート平均価格の伸び率

ハンオール区は、市中心部でも比較的大気汚染の被害が少なく、高級住宅街がある人気エリアで、景気回復を受けて富裕層による購入が増加し、価格上昇につながったとみられる。一方、ソンギノハイルハン区は、ゲル地区に近く大気汚染の影響を受けやすい上、他区より市中心部から離れているため、他区に比べて1平方メートル当たりの単価が安い。同区の主な購買層は低所得・中間所得層となっているが、政府の住宅ローン優遇金利の貸し出しがIMFの支援を受けて引き締められたため、購買力が低下し、価格が下落したようだ。

今後の価格上昇余地は限定的か

ウランバートル市のアパート価格の今後の見通しは、人気エリアや新築・築浅物件については、住み替え需要による価格上昇の可能性がある。また、2019年は政府が8%住宅ローン優遇金利の財源を2018年より拡大し、大気汚染対策を目的として主にゲル地区からアパートへの移住支援を実施するため、一部の狭小・築古物件などの価格上昇はあり得るが、全体としては供給過剰が続くため、価格上昇の余地は限定的とみられる。

(注1)住居用に設計・建設され、ライフライン(上下水道・暖房・電気)に接続された4世帯以上の集合住宅の価格で、国家統計局が不動産仲介業者に四半期ごとに調査させた結果をインデックスにしたもの。新築、中古住宅ともに含まれる。

(注2)8%の住宅ローン優遇金利の適用を受けるには、一定の所得がある、初回購入のみ、ゲル地区からの移住に限定(2019年以降)などの条件があり、住宅面積の上限(80平方メートル以下)も設定されている。なお、通常の住宅ローン金利は年率16~20%程度となる。

(藤井一範)

(モンゴル)

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