「国家産業戦略2030」を発表、プラットフォーム企業に警戒感

(ドイツ)

欧州ロシアCIS課

2019年02月07日

ドイツ経済・エネルギー省は2月5日に「国家産業戦略2030」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これは、今後、長期的にドイツおよび欧州の製造業の競争力と経済・技術面の優位性を維持するための産業政策策定のための指針となるもの。

この指針では、「デジタル化」と「人工知能(AI)の活用」が最も重要な基礎イノベーションとした上で、現在、国際的な成功を収める企業の大多数はこの分野の技術に基づく企業であることを指摘した。また、米国や中国の巨大プラットフォーム企業(注1)の躍進により、ドイツおよび欧州の企業の競争力が失われている現状を問題視。現在、競争力がある自動車などのモビリティー分野やヘルスケア分野でも今後、プラットフォーム企業は脅威になるとしている。

AI活用における重要分野としては「自動運転」と「医療診断」を挙げており、基礎研究に強いドイツの課題は応用分野でその強みを発揮することだとしている。既存の強みがある製造業で技術を主導する立場に置くことが重要だとし、競争のためにはEU域内で、研究開発、生産、サービス・流通などの全ての工程(バリューチェーン)を完結させることが重要とした。また、製造業の付加価値を現在のGDP比23%から2030年までに25%に引き上げる目標を提示するとともに、EUレベルでも20%へ引き上げることを提案している。

さらに、今後の競争には資本面などの企業の「規模」も重要だとし、企業の大規模化を重視。一方、これまでドイツの屋台骨とされてきた中小企業「隠れたチャンピオン」も、デジタル化の流れにより脅威にさらされていると指摘している。

国外企業による企業買収についても言及し、自由で開かれた市場が大原則であること、企業買収に関して不利益が生じる場合でも原則、それを阻止するのは企業であるべきこと、また、国による介入は必要最小限であることなどを前提としつつも、国の経済や安全保障に大きな損失与え得る企業買収に対しては、政府による一定期間の買収などの介入を行う姿勢も打ち出した。特に、政府が特に注視する産業分野として、蓄電池生産、AI、自動運転が挙げられている。

国家産業戦略2030は今後、産業界、労働組合、学術界関係者との協議や、州政府、連邦議会での議論を踏まえて必要な修正をし、閣議決定される見込み。また、域内での競争力を確保するための競争法などを含む、法改正も視野に入れた具体的なロードマップ(注2)も作成する予定。

(注1)商品やサービス・情報を集めた「場」を提供する企業のこと。アマゾンやテンセントなどの企業のことを指す。

(注2)実施する内容やその時期を定めた行程案のこと。

(福井崇泰)

(ドイツ)

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