欧州議会、シンガポールとのFTAを承認

(EU、シンガポール)

ブリュッセル発

2019年02月14日

欧州議会(本会議)は2月13日、EU・シンガポール自由貿易協定(FTA)とEU・シンガポール投資保護協定(2018年10月16日記事参照)を承認した、と発表した。

対米貿易依存からの脱却を示唆

欧州議会での採決では、FTAは賛成425、反対186、棄権41、投資保護協定は賛成436、反対203、棄権30と、いずれも圧倒的多数で承認された。

欧州議会は、今回の協定をEUとASEAN加盟国とのFTAとして重視する姿勢で、アジア大洋州地域への足掛かりと位置付けている。また、今回の発表で注目された点として、欧州議会が現在の情勢について「貿易相手として米国に依存できない」と分析、アジア大洋州地域への期待感をにじませたことがある。欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長も同日、シンガポールとのFTAは「欧州と成長著しい地域との緊密な経済圏構築」につながるとコメントしている。

今回のFTAでは、発効から5年でほぼ全ての関税が撤廃される見通しだが、EU側の関心はリテール・バンキングなどサービス分野や地理的表示保護、鉄道市場を含む政府調達市場へのアクセスなどにあるとみられる。また、欧州議会は労働者の権利保護や環境保護などがFTAに含まれていることを強調している。

投資保護協定については、EUが国家対投資家の紛争解決システムとして通商協定への導入を求めている投資裁判所制度(2016年2月8日記事参照)が採用された。

今後のプロセスとして、FTAはEU理事会(閣僚理事会)での承認が必要で、その批准手続き完了から2カ月目の第1日に発効する。投資保護協定の発効には全EU加盟国の批准手続きが必要となる。

(前田篤穂)

(EU、シンガポール)

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