在スペインの日系企業、政治・社会情勢リスクは軽減

(スペイン)

欧州ロシアCIS課

2019年01月04日

2018年12月11日にジェトロが発表した「2018年度欧州進出日系企業実態調査」(回答在スペイン日系企業数:24社、注)によると、在スペイン日系企業の2018年の営業利益見通しでは、回答企業24社のうち4分の3に当たる18社(75.0%)が「黒字」と回答し、「均衡」「赤字」と回答した企業はともに3社(12.5%)だった。欧州全体で「黒字」と回答した企業割合(73.9%)と同程度の高水準を維持した(表1参照)。

また、回答企業の半数が、2017年と比較した2018年の営業利益見込みについて、改善していると回答するなど、多くの企業が営業利益の増加を実感している。一方、2018年と比較した2019年の営業利益見込みについては、他国と比べ、やや悲観的な結果となっている。また、製品・サービスの高付加価値化や差別化のために力を入れている取り組みとして、「研究・開発部門の強化」を挙げる企業が9社(45.0%)あるなど、研究・開発への投資を志向する企業の割合が大きいのも特徴となっている。

表1 在スペイン日系企業の営業利益見込みの推移

英国のEU離脱(ブレグジット)による今後の影響について、「マイナスの影響」があるとした企業割合は33.3%(8社)で、2017年の調査結果より増加した(表2参照)。一方、「影響はない」の回答割合も33.3%(8社)となり、前年よりやや低下したが、欧州全体の平均値(20.7%)よりは高かった。

表2 英国のEU離脱の今後の事業への影響

具体的な懸念事項としては、前年と同様に、「EU経済の不振」(15社、回答企業の68.2%)、「英国経済の不振」(11社、50%)など間接的な影響を回答した企業が多かった。以下、「英国の規制・法制の変更」(8社、36.4%)、「EU拠点から英国への輸出」(8社、36.4%)が続いた。

2019年2月の発効が決まった日EU経済連携協定(EPA)については、「メリットが大きい」と回答した企業の割合が大きく、24社中15社(62.5%)が回答した。

「日EU・EPAの利用について、どのような情報が必要か」という問いに対しては、「関税に関する詳しい情報」や「具体的な対象品目の確認」「必要書類や原産地証明書の確認」などを明示する回答がみられ、利用に向けては、より詳細な関税手続きの情報が必要とされている。

経営上の問題点・リスク事項としては、前年の調査に引き続き、「欧州の政治・社会情勢」が最大の課題で、24社中13社(54.2%)が課題として挙げた。ただし、ブレグジットや移民問題のほか、カタルーニャ州の独立問題が大きく報じられた前年調査の82.9%からは、28.7ポイント減少している。ただし、リスク事項として「カタルーニャ独立問題の慢性化」を挙げた企業もあり、引き続き懸念事項となっている。

(注)設問によって回答が得られなかった企業もあるため、回答企業数は設問ごとに異なる。

(出沼順子)

(スペイン)

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