2018年第3四半期GDP成長率は6.0%に回復も、ビジネス環境には課題

(ケニア)

ナイロビ発

2019年01月21日

ケニア国家統計局は2018年12月31日、2018年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率を前年同期比6.0%と発表した(表参照)。天候不順や大統領選挙に伴う政情不安で経済が低迷した2017年同期の4.7%に比べ1.3ポイントの回復だ。課題だったケニア・シリングの下落は、比較的潤沢な外貨準備高を背景に実行したケニア中央銀行の中期的な介入により、対ドルで前年同期の103.30ケニア・シリングから101.62ケニア・シリングまで上昇した(ケニア中銀が発表した第3四半期中心相場の平均)。産業別では、農林業、製造業、電力・水道供給の成長が目立った。

表 第3四半期実質GDP成長率

干ばつに苦しんだ前年同期に比べ、外貨獲得の要である紅茶の生産量は12.3%、コーヒーは8.5%増加した。農林業の好調を背景に、製造業の中でも飲料や菓子など食品加工が好調だ。印刷、記録メディア、モーターバイクの組み立て、基礎化学品や肥料、基礎プラスチック製品、薬品など食品以外の製造業も好調が目立った。電力・水道供給も干ばつの影響があった2017年同期の4.5%に比べ8.5%と上向いた。水力発電量は前年同期の約2倍の時間当たり12億キロワット、地熱発電量は時間当たり13億キロワットで7%増加した。2017年から引き続き、観光業の成長率も16%と好調だ。2019年には米系高級ホテルチェーンのマリオットがケニアでフランチャイズ展開を予定しているほか、ヒルトンもナイロビ市内にホテルの増設を進めている。

一方で、ケニアでの企業経営は厳しい状況だ。2018年の平均株価が値上がりしたナイロビ証券取引所上場企業は64社中7社で、4社が横ばい、53社は値下がり傾向だった。また、現地メディアは2018年中に年次報告書を公表した少なくとも23社が売り上げの減少を報告したと報じている(「ビジネス・デイリー」紙2018年12月24日)。要因の1つが民間金融機関の貸し渋りだ。IMFの忠告にもかかわらず、ケニア政府は2016年に設定した貸出金利の上限を2018年も撤廃せず、よって金融機関による貸し渋りが継続しており、融資が受けられない地場中小企業にとっては痛手だ。また、中小規模の金融機関にとっても冷え込みは厳しく、今後生き残りのため金融機関の統廃合が続く見通し。2019年のケニア経済に課題が残るかたちだ。

(久保唯香)

(ケニア)

ビジネス短信 9ebc0d05ea6cbfab