フン・セン首相、国境検査の「カムコントロール」撤廃を示唆

(カンボジア)

プノンペン発、アジア大洋州課

2019年01月17日

カンボジアのフン・セン首相は1月11日、同国ジャーナリストとの会合において、国境検問所の検査義務となっている「カムコントロール」(注)を、貿易円滑化の一環として撤廃することを示唆した。

当地報道によると、首相は「先進国による貿易優遇措置への依存を減らし、同国が経済的に自立するための政策を進めていく」とした上で、「国境検問所においては入国警備官と税関以外の政府機関は、カムコントロールでさえ必要ない」と述べた。カンボジアは後発開発途上国として、先進各国から特別特恵関税制度を適用されているが、EUは同国の2018年国民議会選挙に係る、当時最大野党だった救国党党首の逮捕や同党の解党などの政治動向を受け(2018年7月12日記事参照)、同優遇措置を停止することを検討していた。

商業省所管のカムコントロールは、輸出入される全貨物を対象として検査を行っており、税関と実質二重チェックとなっている。現地日系企業からは「カムコントロールによる検査が適用される根拠が不明確」「コストが高く、時間がかかる」などと、カムコントロールによる検査が貿易の障壁となっているとの声が多く聞かれている。カンボジア縫製業協会(GMAC)によると、カムコントロールによる検査費用は、最初のコンテナに対し25万リエル(約6,750円、1リエル=約0.027円)、2つめのコンテナ以降6万リエルとなっている。

カンボジア日本人商工会(JBAC)は以前から、日本・カンボジア官民合同会議などの場で、カムコントロールによる検査の目的や対象品目の明確化、優良企業に対する当検査の免除および減免、当検査自体の撤廃などといった要請を行ってきた。それに対して、ようやくカンボジア政府が対応に向けて動き出したとみられる。

ただし、カムコントロールの撤廃に関する具体的な決定がいつ発令されるかについては、明らかにされていない。

(注)カムコントロールとは、関税とは別に必要となる輸出手続きで、カンボジア独特の制度。

(磯邊千春、安野亮太)

(カンボジア)

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