TPP11の活用で税関手数料(DTA)を軽減

(メキシコ)

メキシコ発

2019年01月04日

環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)の発効により、メキシコの税関手数料(DTA)が軽減される(表1参照)。メキシコでは確定輸入時に原則、税関評価額の0.8%がDTAとして課される。しかし、自由貿易協定(FTA)などで加盟国が相互に手数料の撤廃や削減を規定している場合は、原産国に応じてDTAが免除・削減される。

表1 確定輸入における税関手数料(2019年、原産国別)

日本メキシコ経済連携協定(日墨EPA)には税関手数料についての特別な規定がなく、日本産品に一般のDTAが適用されている。しかし、TPP11の第2-14条は、「各国の税関手数料が役務の費用の概算額を限度とし、従価により手数料や課徴金を課してはならない」と規定しており、TPP11が発効後のDTAは定額〔2019年は1申告当たり331ペソ(約1,821円、1ペソ=約5.5円)〕まで引き下げられることになる。同内容は、2018年11月30日に官報公示された「2018年の貿易に関する一般規則」第3次改定で第5.1.5則に追記され、国内法規化されている。

一般関税が無税でもTPP11を活用

従価税方式のDTAは、輸入申告価格が大きければ、その分高額になる。そのため、高額な機械設備の輸入などには、TPP11を活用し、DTAの負担額を軽減できる。国内生産がない機械設備に対するメキシコの一般関税率は無税になっていることが多く、EPAなどの特恵関税を適用する必要はないが、高額商品の場合はDTAの負担は大きい。TPP11を活用して、DTAを削減する対策が有効だ。また、DTAは輸入時に支払う付加価値税(IVA、注)の課税ベースに算入されるため、DTAを減額することで、IVAの支払額も小さくなる(注)。例えば、100万ドルのマシニングセンターを日本からメキシコに確定輸入する事例では、TPP11の使用有無の差はDTAとIVAを合わせて租税公課9,261ドル分になる(表2参照)。

表2  適用協定の選択によるDTA、IVAの支払額の違い

TPP11を活用する場合は、輸入者が通関士などを活用した電子輸入申告時に、TPP11(スペイン語でTIPAT)を活用した輸入であることを識別するコードを入力する必要がある。また、生産者、輸出者、輸入者のいずれかが作成したTPP11の原産地証明書を、メキシコ貿易手続き単一窓口(VUCEM)経由でアップロードする必要がある。

(注)IVAは、最終消費者が負担する間接税であるため、中間事業者は相殺・還付手続きなどを通じて税関に支払った分を最終的には回収できるが、実際に回収するまでの間のキャッシュフロー負担が生じる。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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