経済成長は継続、労働力不足による賃金上昇を予測

(ハンガリー)

ブダペスト発

2019年01月28日

国立銀行(中央銀行)は、2018年12月に発表した経済見通しで、2019年のハンガリーの実質GDP成長率を3.5%と予想。国内消費や投資活動が成長を牽引するとした。

ハンガリー経済は2018年第2四半期(4~6月)、第3四半期(7~9月)にともに前年同期比4.9%の成長を記録、直近では2005年第4四半期(10~12月)と並ぶ高い成長率となった。ちなみに、2018年度第1~3四半期の成長率はEU平均の2倍を記録した。中銀は、さらなる個人消費や企業活動の活発化により、2018年通年で4.7%の成長を期待する(表参照)。

経済を牽引する輸出は、英国のEU離脱(ブレグジット)問題や米国の強硬な通商政策、中国経済の減速による金融市場の動揺の影響を受けることが懸念される。しかし、輸出産業への追加投資や観光、輸送、金融、ITなどサービスの大幅な拡大により、2019年は2018年の前年比5.8%増(見込み)を上回る6.5%増が期待される。

輸入は、消費や投資活動が依然活発なものの、2018年見込みの7.5%増から減速し7.2%増を予想する。

家計消費は、過熱傾向にあった労働市場の沈静化や賃金上昇率の減速から、2019年に3%増台の成長が見込まれる。家計消費を刺激する要素としては、(1)消費者信頼感指数が歴史的に高いレベルにある、(2)家庭用家具や電化製品の需要増(政府の住宅購入促進策の2次効果)、(3)子供のいる家庭向けの家族減税の拡大、が挙げられる。

2019年の総固定資本形成は、建設業での人手不足などが影響し、2018年見込みの前年比16.8%増から8.1%増に減速が予想される。企業の投資活動は、活発な国内需要、中小企業向けローンの金利低下による残高拡大などにより、引き続き活発だ。2018年に公表されたBMWの工場進出など大型投資計画が新規の投資を呼び込むものと期待される。

消費者物価指数上昇率は、2018年春以降の燃料や生鮮食品の値上がりや通貨フォリント安を受け、急速に上昇した。2018年の年間上昇率は2.8%、2019年は活発な国内消費、賃金の大幅な上昇、たばこ税増加などの影響で2.9%と予想する。

既に歴史的な低さになっている失業率はさらに低下し、2018年3.7%、2019年3.6%と予想する。なお、順調な経済成長を受け、民間部門での労働力需要は旺盛だが、エンジニアなど欲しい職種の労働者を採用できなかったり、労働者側も長距離通勤はしたくなかったりするなどの理由から、労働力需給にミスマッチが発生しており、失業率の低下傾向は一服するとの見方もある。

労働力不足は賃金上昇に影響を及ぼしている。企業間の労働力確保や新規獲得競争が激しくなり、結果として従業員の賃金上昇につながっている。政府は公共部門でも、健康福祉、教育などの分野で賃金を引き上げている。これまで同様、最低賃金引上げは賃金上昇に影響を及ぼし、2019年は8.5%増を予想する。

表 主要経済指標

(バラジ・ラウラ、本田雅英)

(ハンガリー)

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