インド準備銀、対外商業借り入れの規制を緩和

(インド)

ムンバイ発

2019年01月29日

インド準備銀行(中央銀行)は1月16日、対外商業借り入れ(External Commercial Borrowings:ECB)の新しい枠組みに関する通達を出し、即日施行した。旧規制から変更された主なポイントは次のとおり。

  • 借り入れ可能な業種が、外国直接投資(FDI)を受けることができる全ての事業体に拡大
  • ECBの分類が、外貨建てECBとインド・ルピー建てECBの2種類に統合
  • 最低平均償還期間は金額や分類にかかわらず、原則3年に統一(一部例外あり)

業種の拡大により、これまでECBの対象外となっていた販売会社や商社、サービス産業などが、今回の通達によりECBが利用可能となったことで、親会社など海外からの資金調達が可能になった。また、従来のECBは「外貨建て中期借り入れ」「外貨建て長期借り入れ」「インド・ルピー建て借り入れ」などの複数のトラックに分かれ、それぞれのトラックに細かい規定があった。今回の改定では、これを「外貨建てECB」と「インド・ルピー建てECB」の2つに大別するとともに、各規定の緩和を実施した。さらに、最低平均償還期間についても、借入金額やトラックによる区別はなくなり、原則3年に統一された。ただし、例外規定については不変で、資金使途が運転資金などの特定の用途の場合、外国株主からの貸し付けを条件に、最低平均償還期間は5年のECBが可能となっている。概要は添付資料のとおり。

新制度の周知が肝要との指摘も

金融機関に新ECBの枠組みの影響について聞いたところ、これまではECB非対象業種の会社については、増資や現地金融機関からの借り入れによる資金調達が多かったとし、「新しい枠組みで親子ローンが可能になれば、日系企業にとっては選択肢の幅が広がる」と評価した。また、インド現地法人と日本本社(外国株主)との親子ローンとなれば、為替リスクは残るものの、日本での貸出金利に近い金利での資金借り入れが可能になる点にも言及した。一方で、新しい枠組みの発表が必ずしも周知されているとも言いがたく、金融機関やコンサルティング会社が、日系企業に周知をさせることが重要だとした。別の金融機関は「驚くべき緩和だが、新枠組みを用いた融資に当たっては、親会社の保証が必要となるだろう」と述べ、日本からの借り入れの増加につながるかは、先行きがまだみえないとした。また、「日本側の金利が低かったとしても、ルピー相場が安定しなければ、依然として外貨建ての借り入れにはリスクが伴う」と指摘した。

一方、ECBのユーザーとなる日系企業は「ECBの規制緩和はニュースで知ったが、詳細は確認できていない。日本の親会社からの借り入れが可能になることは、非常に有効だ」との声もあった。今回の新枠組みは非常に大きな規制緩和だが、通達が発表された直後であり、日系企業の間で大きな話題になっているという印象は薄い。また、実例がないため、その運用や課題についての評価が難しく、今後の新枠組みの利用とそのフィードバックが待たれる。

(本庄剛、比佐建二郎)

(インド)

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