ノー・ディールへの備え、産業団体が企業に呼び掛け

(英国、EU)

ロンドン発

2019年01月25日

英国産業連盟(CBI)は1月22日、英国が何ら合意なくEUを離脱(ノー・ディール)した場合の地域別の経済影響の分析結果と、各地域の企業からのヒアリング内容を公開した。英国を12地域に分けて分析した。各地域で生産した物品とサービスの付加価値を積み上げた粗付加価値(GVA)ベースで最も影響額が大きい地域はロンドンで、2034年までの間に年間400億ポンド(約5兆7,600億円、1ポンド=約144円)の損失が発生するとの分析だ。他の地域でも同時期に年間で数十億から数百億ポンド規模の損失となっており、合計で年間1,930億ポンドとなる。

地域経済に占めるノー・ディールの影響が高い地域は北東イングランド地域で、現在のEUとの枠組みが継続する場合と比べて、2034年までの間に域内で創出される付加価値は10.5%のマイナスとなる。この地域では製造業がGVAの15%、雇用の10.4%を占めており、かつ全輸出に占めるEUの割合が55.3%と、北アイルランド地域(74.14%)、ウェールズ(57.6%)に次いで大きいことから、EUとの間で関税が設定されることでリスクが比較的大きくなるとの分析だ。

英国経営者協会(IoD)はEU離脱(ブレグジット)への準備を企業に呼び掛ける動画を作成し、EU市場に対する事業の大きさや、自社ビジネスのキャッシュフロー、EU市民の労働者への依存度を確認することを求めた。ブレグジット後に通関手続きが発生する場合に備え、流通の遅れによる実損害や原産地証明の要否、利用する港湾のキャパシティー、規制の変化なども含めたサプライチェーンもチェックポイントとして挙げている。また、各企業が所属する産業団体から情報を取得することに加え、英国政府が発表するノーディール・ガイダンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますと欧州委員会のガイダンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを紹介した。特にIoDでは英国政府のノーディール・ガイダンスを広範囲の政策と産業分野をカバーするものとして、企業が参照することを推奨している。

(木下裕之)

(英国、EU)

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