メキシコ政府、ベネズエラの紛争解決に向けた仲介役を申し出

(メキシコ、ベネズエラ)

メキシコ発

2019年01月29日

メキシコ外務省は1月23日、ベネズエラでフアン・グアイド氏が暫定大統領への就任を宣言したことを受け、憲法第89条に規定された外交の原則(国民自身による決定、内政不干渉、紛争の平和的解決など)にのっとり、外交関係がある国の現大統領を否認することはないと発表した(同省プレスリリース)。ただし、明確にニコラス・マドゥロ大統領を支持することはせず、ウルグアイ政府と共に、ベネズエラ国内の紛争の平和的解決に向けた仲介役を務めるとしている。

また、国連の呼び掛けに賛同し、混乱・紛争の当事者に対し、緊張を緩和し、暴力に訴えることなく、平和的な解決を模索するように呼び掛けている。その上で、ベネズエラ国内の安定、同国民の福祉と平和に資するための協力は惜しまないとしている。

人道的支援の立場から移民に寛容な姿勢を貫く

メキシコは伝統的に人道的支援の立場から移民に寛容な国で、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール現政権においては、その立場がさらに強化されている。2018年から幾度となく、米国への移住を目指す中米諸国の移民キャラバンがメキシコに押し寄せているが、現政権はグアテマラとの南部国境で、移民団に対して人道的目的の一時滞在許可を発行し、メキシコへの入国を許可している。また、米国政府が事前合意もなく、米国で難民申請中の中米移民をメキシコ側に送り返すと通知したことに対しても、一方的な決定だとして遺憾の意を表しながらも、人道的な立場から国境都市で受け入れる考えを示している(「レフォルマ」紙1月25日)。

ベネズエラからの移民急増に対しても、メキシコ政府は寛容な立場だ。内務省の統計によると、ベネズエラ人に対する人道的目的の一時滞在許可の発給件数は、2016年に181件だったものが2017年は1,649件に急増。2018年は11月時点で既に3,828件に達し、同目的によるビザ発給件数はホンジュラス人(5,061件)に次いで2番目に多い(ちなみに、3位はエルサルバドル人の2,706件)。政治的な背景による移民の急増は、首都メキシコ市や米国との国境都市を中心に、移民キャンプの設置や食糧の配給などを通じて、連邦政府や地方自治体の経費負担を増加させており、財政収支均衡を守るためにさまざまな分野で緊縮予算が組まれている中で、国民よりも移民を優先するのかという非難の声が少しずつながら聞こえ始めている。

(中畑貴雄)

(メキシコ、ベネズエラ)

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