米国、ルスアルなどへの制裁解除を表明

(ロシア、米国)

欧州ロシアCIS課

2018年12月20日

米国財務省外国資産管理局(OFAC)は12月19日、ロシア新興財閥のオレグ・デリパスカ氏が直接的または間接的に株式を保有するロシアのアルミ製造大手ルスアルと、ルスアルの主要株主で資源大手En+グループ、電力大手ユーロシブエネルゴ(EN+グループ傘下)に対する制裁を30日以内に解除することを米国連邦議会に表明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。正式な解除に当たっては、これら対象企業がOFACの求める条件に文書で合意する必要がある。

OFACによると、制裁解除に向けて当該3社は、OFACが求める条件に原則合意しているという。具体的には、a.デリパスカ氏の持ち株比率の削減、b.En+グループとルスアルの取締役会の構成員の見直し、c.コーポレートガバナンスの強化、d.経営の透明性を保証するための(OFACに対する)監査・報告義務の受諾、の4点。これらの条件は「解除の条件(Terms of Removal)」という文書で各企業とOFACの間で締結されることになる。OFACによると、これにより、デリパスカ氏のEn+グループ持ち株比率は70%から44.95%まで低下、ルスアルでの持ち株比率は0.01%まで低下する。

なお、デリパスカ氏個人は引き続き特別指定国民(SDN)リストに登録され、米国における個人資産と、同氏が50%以上の株式を保有する企業の資産は凍結される。

本件は2018年4月6日に導入された追加制裁(2018年4月10日記事参照)に対する解除措置。制裁対象に世界のアルミ生産量2位を誇るルスアルが含まれていたことから、国際的な影響が大きく、OFACは4月23日に制裁導入の猶予期間を設定し、その後4回にわたり猶予期間を延長し、最新の猶予期限は2019年1月21日となっていた(2018年12月10日記事参照)。

他方、OFACは今回の制裁解除表明と同じ日に、新たな制裁対象として18個人と4団体を特別指定国民(SDN)リスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに追加した。米国大統領選挙への介入や世界アンチドーピング協会へのサイバー攻撃、3月に英国で起きたロシア人元諜報機関員の暗殺未遂事件での化学兵器使用の疑いなどが理由とされる(タス通信12月20日)。対象者・団体の米国における資産は凍結され、米国内における取引も禁止される。個人のうち15人はロシア連邦軍参謀本部情報総局の職員、団体は全て通信社だった。

米国のリスク分析コンサルティング会社のユーラシア・グループは、米国による今後の制裁動向について、ルスアルに対する制裁ほど影響力のある制裁は予想されないが、ウクライナとの黒海での衝突や、ロバート・モラー特別検察官による米国大統領選挙へのロシアの介入疑惑の捜査結果が2019年の制裁導入の契機となると予測している。

(戎佑一郎)

(ロシア、米国)

ビジネス短信 e787a13fc8540cee