欧州会計検査院、運輸分野におけるインフラ投資の遅滞を問題視

(EU)

ブリュッセル発

2018年12月07日

欧州会計検査院(ECA)は12月6日、EUの運輸ネットワーク基盤(インフラ)の整備状況について、投資縮減などの影響で近代化に支障をきたしているとの認識を明らかにした。ECAは、EU域内で約1,100万人の雇用創出に貢献している運輸部門の経済的な重要性を強調し、その基盤整備のための投資の必要性をEUに訴えた。

民間投資も活用したインフラ投資の需給ギャップ対策を示唆

欧州委員会の推計によると、EU域内の運輸インフラ整備に求められる投資規模は年間1,300億ユーロ(既存インフラ保守経費など含まず)とされており、域内のロジスティクスの円滑化を進める「汎(はん)欧州運輸ネットワーク計画(TEN-T)」では、2021~2030年までの中核的インフラ整備だけでも約5,000億ユーロ(その他の投資も含めると約1兆5,000億ユーロ)が必要と見積もられている。

域内の運輸インフラ整備のための開発、資金調達、施工などの実務的な責任は主にEU加盟国が負っている。EUは各種の基金などを活用し、各国の運輸政策を支援する立場にあり、ECAによれば、2007~2020年の期間でEUは総額1,930億ユーロ相当のインフラ整備支援を行う。

しかし、ECAは運輸インフラ整備の投資資金の需給ギャップを問題視しており、特に東欧でこの傾向が顕著だと警鐘を鳴らしている。欧州債務危機以降、EU加盟国には公的財政が逼迫している国があるため、戦略的な運輸インフラ整備事業に関しては、民間投資も積極的に活用するなどの取り組みが必要だとECAは指摘する。

なお、ECAの報告書や意見に法的拘束力はないが、EU域内の運輸インフラ整備のための投資活性化が課題として提示されたことになる。EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会は12月3日、運輸、エネルギー、情報・通信のネットワーク構築プロジェクトを支援する政策パッケージ「コネクティング・ヨーロッパ・ファシリティ(CEF)」を2021~2027年についても継続する方針で合意している。

(前田篤穂)

(EU)

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