EU、ブレグジット合意をめぐる再交渉の可能性を否定

(英国、EU)

ブリュッセル発

2018年12月12日

EU首脳は12月11日、英国議会でのEU離脱(ブレグジット)協定案の採決延期(2018年12月11日記事参照)を決めた英国のテレーザ・メイ首相と会談した。欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長は会談後、ツイッターに「EU27カ国として(英国を)助けたい思いは明確だ」「問題はその思いをどう実現するかだ」と投稿した。また、12月10日にもツイッターで12月13日の欧州理事会(EU首脳会議)においてバックストップ条項を含めて再交渉はしないが、英国議会での承認を促すための議論には応じる、また、合意なき離脱(ノー・ディール)に向けた対策ついて協議する旨を表明している。

また、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長は12月11日、11月25日の合意案が想定され得る最善かつ唯一のもので、合意について再交渉の余地はなく、あり得るとしても、内容の明確化や具体的な解釈を示すことが限界、と発言した。

ノー・ディールへの警戒感が高まる中、産業界からは不安の声が上がる。欧州船主協会(ECSA)は12月11日付の声明で、「英国で発行された資格証明書(CoC)を保持する船員は、(ブレグジット以降、EUで)就労できなくなるリスクがある」と指摘。「ECSAとしては欧州輸送労働者連盟(ETF)と連携して、英国発行の資格証明を持つ船員が欧州経済領域(EEA)船籍の船舶での就労を続けられるよう、英国政府と現実的な合意を模索することを欧州委員会およびEU加盟国政府に働き掛ける」とコメントしている。

欧州製薬団体連合会(EFPIA)は12月10日付の声明で、英国議会での離脱協定案採決の延期について、「多くの産業界で単純に経済的リスクと認識されているが、医療産業にとっては患者の生命の安全に直結する問題だ」と指摘した。また、英国の無秩序なEU離脱は、英国・欧州全域で患者の安全や健康に深刻で実態的な影響をもたらすことを考慮して採決してほしい、と英国の議員に訴えた。なおEFPIAは、欧州委や加盟国とノー・ディール時に取るべき緊急措置の共有、具体的には「医薬品や臨床試験用原料に対する暫定的な通関検査や関税賦課の免除」などの特例対応を提言している。

(前田篤穂)

(英国、EU)

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