第3四半期のGDP成長率は前期比マイナス0.1%

(イタリア)

ミラノ発

2018年12月11日

イタリア国家統計局(ISTAT)の発表(11月30日)によると、2018年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率(季節調整済み)は前期比でマイナス0.1%(表参照)、前年同期比ではプラス0.7%となった。四半期ベースでは、2014年第2四半期以来のマイナス成長を記録した。

表 イタリアの需要項目別実質GDP成長率(前期比、四半期ベース)

GDPを需要項目別でみると、寄与度の高い民間最終消費支出が前期比で0.1%減となって経済成長を押し下げた。2018年1~11月の乗用車の新車登録台数は前年同期比で3.6%減となっている。特にディーゼルエンジン車は105万7,000台から93万2,000台へ11.8%減少。年間で2万台の登録増を見通した2017年末時点での2018年新車登録台数予測値を下回るペースとなっている。

主要経済指標の動向をみると、鉱工業生産指数、消費者信頼感指数などはおおむね横ばいだが、企業信頼感指数が低落傾向だ。2018年11月の企業信頼感指数は、憲法改正を問う国民投票での否決を受けてマッテオ・レンツィ首相(当時)が辞任する事態に至った2016年12月以降では最も低い値となり、政治動向の先行き不透明感もビジネス環境に一定程度の影響を与えていると考えられる。

イタリアは現在、2019年政府予算案をめぐり、EUから安定・成長協定(Stability and Growth Pact)違反を指摘されており、EU側は予算是正措置である「過剰財政赤字手続き(EDP)」に向けた作業に入っている。エコノミストや当地ビジネス関係者の中では、両者の交渉が決裂して罰金賦課、欧州構造投資基金の停止などの具体的な制裁措置が実施されるまでにはならないとの見方が強く、イタリア政府の閣僚からも違反に関わる措置が発動される事態は回避する趣旨の発言が出ているが、2018年12月6日時点では問題の解決には至っていない。

国内政治に着目する向きもある。内相に就任したマッテオ・サルビーニ党首が率いる右派政党の同盟は、従来の年金改革の撤回や不法移民対策など一般層へのアピール度の高い政策を提唱し、各種世論調査で支持率を伸長させている。一方で、経済開発相のルイジ・ディ・マイオ氏が率いる反既存政党の五つ星運動は、同氏が対EU交渉、アリタリア航空の経営再建、トリノ・リヨン間の高速鉄道建設など困難な政策課題に直面していることもあり、支持率を下落させている。両党の支持基盤は異なることから、政治の先行き不透明感を指摘して実体経済への影響を懸念する声もみられる。

(山内正史)

(イタリア)

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