FRBが政策金利を3カ月ぶりに引き上げ、2019年の利上げペースは減速
(米国)
ニューヨーク発
2018年12月21日
米国連邦準備制度理事会(FRB)は12月18~19日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を、2.00~2.25%から2.25~2.50%に引き上げることを決定した。利上げは9月(0.25ポイント)以来3カ月ぶりで、2018年に入って4回目。今回の決定は全会一致だった。なお、11月26日に就任したミシェル・ボウマン理事は、今回会合から投票権を持った。
FOMCメンバーによるFFレートの見通し(17人の委員メンバーの中央値)は、2019年、2020年、2021年、長期がそれぞれ2.875%、3.125%、3.125%、2.750%と、いずれも9月会合時点から0.25ポイントずつ引き下げられた(図参照)。1回当たりの利上げ幅を0.25ポイントとして、2019年の利上げ回数の見通しは3回から2回へ引き下げられた。一方で、2020年は1回、2021年は0回と、前回から維持された。パウエルFRB議長は「数カ月前と比べて景気軟化を示す兆候」が幾らかみられ、実際に「経済が予想よりも弱いと判断された場合、FOMCは利上げペースを遅らせたり、一時停止させたりする」と述べた。
経済の先行きに対する見方を慎重化
FOMCの声明は米国経済全般の現状について、「労働市場が引き続き力強さを増し、力強いペースで拡大を続けた」とし、前回から維持した。一方で、政策金利の先行きについて、「さらなる幾分かの緩やかな(some further gradual)利上げ」が必要とし、前回から「幾分かの」との文言を加えた。また、「経済見通しに対するリスクはおおむね均衡」との見方は維持しつつも、FOMCの姿勢として「引き続き世界経済・金融情勢の動向を注視し、経済見通しへの影響を評価していく」との記述を追加した。
同時に発表された2019年以降の実質GDP成長率や、失業率、物価上昇率の予測中央値は、2018年と2019年のGDP成長率、2018年から2021年までの物価上昇率(コアPCE)がそれぞれ前回から0.1~0.2ポイント引き下げられたほか、2020年と2021年の失業率が0.1ポイント引き上げられた(表参照)。
米証券会社イー・トレードの投資戦略担当バイスプレジデント、マイク・ローウェンガート氏は、今回の利上げは2018年の経済に対する信任投票だが、今後、世界経済の低迷や貿易紛争の激化などを受けて経済が反転するリスクがあり、2019年(の利上げペース)は未知の領域だと指摘した(ブルームバーグ12月20日)。
(権田直)
(米国)
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