習国家主席が公式訪問、スペイン側は「一帯一路」と一線画す

(スペイン、中国)

マドリード発

2018年12月04日

中国の習近平国家主席は11月27~29日にスペインを公式訪問した。中国国家主席のスペイン訪問は13年ぶりで、国王フェリペ6世やペドロ・サンチェス首相との会談、議会上院訪問、国王主催の公式晩餐会、スペイン経団連(CEOE)や主要企業幹部との会合が行われた。

サンチェス首相との会談を受けて発表された共同声明「時代の転換期における包括的な戦略パートナーシップ強化」は、「両国は保護貿易や単独行動主義と対決」していくなど、米国のトランプ政権の強硬な通商政策を意識した内容となった。また、「中南米やアフリカ、アジアの第三国市場における両国間通商協力の大きな可能性」を認識し、合計18件の経済協定が締結された(中国側報道によると、総額154億4,900万ユーロ相当の経済効果)。

主な協定としては、自動車大手セアト〔フォルクスワーゲン(VW)傘下〕による、VWグループと安徽江淮汽車(JAC)の合弁会社への出資参画案件があり、2021年から中国でセアト車の現地生産・販売を開始し、中国市場向けの電気自動車の開発を行うとしている(本案件は7月に基本合意済み)。また農産品分野では、スライス加工品しか輸入できなかったスペイン産生ハムの制限が撤廃され、原木(骨付き)も輸入可能となったほか、食用ブドウの輸入も解禁された。

独仏と歩調合わせる

スペイン国営放送によると、スペイン政府は今回の公式訪問に当たり、中国が主導する経済圏構想「一帯一路」への参画を提案されたが、EUには既にアジアとの連結取り組みがあるため、当面はその枠組みに従うとして参画を断ったとされる。

「エル・パイス」紙は11月28日付社説で、「中南米へのゲートウエーとして、またブレグジット(英国のEU離脱)やイタリアでの政治的混乱が起こる中、スペインに対する中国の関心が高まった」と分析し、「スペインはドイツ、フランスと歩調を合わせ、『一帯一路』の事業には参画しなかった。ギリシャのように参画すれば多大な恩恵があるが、中国の影響が必要以上に大きくなるリスクもある」としている。

(伊藤裕規子、高文寧)

(スペイン、中国)

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