産業団体が政府・議員にノー・ディール回避を要請

(英国)

ロンドン発

2018年12月20日

英国の5つの産業団体は12月19日、EUからの合意なき離脱(ノー・ディール)を避けるよう、政府と議員に要請する声明を発表した。政府は前日の閣議で、ノー・ディールになる場合の準備を加速させることを承認し(2018年12月19日記事参照)、税関手続きや産業規制、移民政策などに関するガイダンスや政策を次々と発表・更新している。

声明では、英国商工会議所(BCC)、英国産業連盟(CBI)、英国製造事業者連盟(EEF)、スモールビジネス連盟(FSB)、英国経営者協会(IoD)のトップが連名で「産業界が前進するために必要な実務的な手順よりも、政治家が党派間の争いに執着する状況に恐怖を感じながら注視している」と、EU離脱(ブレグジット)まで100日と迫る状況を不安視した。

また、コンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)に多くの時間と費用を費やす企業がある一方で、残りの時間ではノー・ディールへの準備ができない企業もあり、あらゆる規模の企業がブレグジットに苦しむ窮状を訴えた。その上で、ノー・ディールの影響を緩和しようとする一連の政府の対応は「説得力のある提案ではない」と切り捨て、企業が膨大な関税コストとサプライチェーンの遮断に直面し、英国の得意分野であるサービス業も苦境に立たされることに懸念を示した。

EUの離脱協定案の採決の道筋がいまだ見えない議会に対しては、道を開く責任は650人の下院議員にあるとして、全ての政党の下院議員に対し、産業界の声を政治に反映するようクリスマス期間中も選挙区に戻り、地域の産業コミュニティーと対話を進めるように求めた。

産業界はかねてブレグジットを背景とするビジネスの不透明感の早期解消を求め、11月に政府がEUと離脱協定案に合意した際には歓迎していた。EUとの交渉に収束の糸口が見えた中で、国内政治によって混乱が収まらない状況に、産業界も懸念を深めている。

(木下裕之)

(英国)

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