2019年の経済政策方針を発表、大規模減税で景気下支えへ

(中国)

北京発

2018年12月25日

12月19~21日に北京で開催された中央経済工作会議は、2018年の経済政策の総括、経済情勢の現状分析を基に、2019年の経済政策の方向性を打ち出した。

会議は2018年の経済政策の成果について、マクロコントロール目標を確実に達成したこと、米中経済貿易摩擦に適切に対処したことなどに触れ、これらの成果をあげることは容易ではなかったとした。

現状の経済については、米中経済貿易摩擦などを念頭に「穏中有変(安定の中、変化あり)」「変中有憂(変化の中に憂いあり)」の状況にあり、外部環境は複雑で厳しく、経済は下押し圧力に直面しているとの認識を示した。

2019年の経済政策全体の基本方針については、穏中求進(安定の中、進歩あり)を堅持し、新発展理念、質の高い発展の推進を堅持するとした。また、供給側(サプライサイド)の構造改革を主軸とし、高水準の開放を拡大すること、3大攻略戦(重大リスク防止・解消、貧困脱却、環境汚染防止)を引き続き進めること、6つの安定(就業、金融、貿易、外資、投資、社会予期)のための対策をより進めること、経済成長を合理的な区間内に保持することなどを挙げた。

マクロ経済政策面では、逆周期(カウンターシクリカル)な調節を強化すること、積極的な財政政策と穏健な金融政策を継続することが示された。財政政策については、より力を入れ、効率を上げるとしており、より大規模な減税・手続き費用の引き下げを行うほか、地方政府専項(特別)債権の規模を増加させる方針を打ち出した。

金融政策では、引き締めと緩和を適度にするとしており、流動性を合理的かつ潤沢に保つこと、直接融資比率を高め、民間企業や小規模・零細企業の融資難の問題を解決することを示した。

2019年の重要任務には7つの項目が掲げられた(表参照)。2018年にはなかった「製造業の質の高い発展を推進する」の項目では、先進的な製造業と現代サービス業の深い融合を推進し、ぶれずに製造強国を建設するとの方針が示された。

表 2019年と2018年の重要任務の比較

「強大な国内市場の形成を促進する」の項目では、投資にカギとなる作用を発揮させ、製造業の技術改造と設備更新を進めること、5Gの商用化への歩みを加速すること、人工知能、IoTなどの新型インフラ建設を強化することのほか、消費環境を改善し、個人所得税の控除政策を実施し、消費能力を増強させることが示された。この項目が掲げられた背景には、米中経済貿易摩擦への懸念が見え隠れする。社会科学院数量経済技術経済研究所の沈利生研究員は、「外需には巨大な不確実性があるため、2019年は国内市場を良くする必要がある」と指摘する(「21世紀経済報道」12月22日)。

「経済体制改革を加速する」の項目では、政府機能の転換を進め、政府による資源の直接配分を大幅に減少させることや、市場が自主的に調整できることは市場に任せ、企業ができることは企業に任せることなど、市場を重視する姿勢も示された。

経済が下押し圧力に直面するなか、政府は大規模減税に加え、コストの削減、製造業への投資の拡大や消費の促進によって景気を下支えする構えだが、「これらの政策は数年間、途切れることなく実施されてきたが、効果はあまり明らかでない」と疑問視する見方もあり、今後、その効果が消費などのマクロ指標に表れるか注目される(「21世紀経済報道」12月22日)。

(藤原智生)

(中国)

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