TPP11発効に対する中国の反応は抑制的

(中国)

北京発

2018年12月27日

環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)」の発効(12月30日)に対する中国側の反応は、現時点ではそれほど目立ってはいない。

中国政府のTPP11に対するスタンスをみると、2018年3月の全国人民代表大会の記者会見において、王毅外交部長兼国務委員は「中国はTPP11には参加しない。しかし、中国は一貫して貿易自由化の揺るぎない支持者で、アジア太平洋地域の協力および経済一体化の重要な参加者だ」「中国は現在、積極的にRCEP(東アジア地域包括的経済連携)交渉に参加している。RCEPであれTPP11であれ、アジア太平洋地域の経済一体化の方向に沿い、透明、開放、包括的という原則に適合し、WTOを中心とするグローバル自由貿易システムの維持に資するものであれば、中国は肯定的に評価する」と述べた。

そして、商務部の高峰報道官は2018年10月18日の定例記者会見において、中国がTPP11へ加入する意思の有無について問われ、「中国が2国間およびマルチの自由貿易協定(FTA)交渉を推進するのは、中国自身の発展のための戦略的な選択で、その時々の情勢に対応するためのその場しのぎの方策ではない」「中国は自身の状況と発展ニーズに基づいて、グローバルでレベルの高いFTA網を構築する」とし、中国自身の利益と意思に基づいてFTA交渉に臨む姿勢を強調している。

商務部国際貿易経済合作研究院国際市場研究所の白明副所長は「TPPのスタート時から、中国は一貫してオープンな態度を示し、国益を損なわないという前提の下で、協定への参加を排除していない。加入のため、中国にとって不利な約束をすることはできない。TPP11の加入のためのより高い基準を満たすためには、中国国内の改革を必要とする」と述べたほか、TPP11協定における「競争中立性」の原則(注1)について、「中国は現在、政府の行動を制限し、あらゆる形態の企業が公平に競争できる競争審査制度を構築しているところだが、定着には国有企業改革の推進などが必要となる」と言及している(「21世紀経済報道」2018年10月19日)。また、中国人民銀行(中央銀行)の易鋼総裁は、2018年10月14日のG30銀行業フォーラムの会合において、「中国経済の構造問題を解決するために、『競争中立性』の原則で国有企業に対処することも考慮していく」と述べた(注2)。

日中関係とTPP11との関係について指摘する有識者もいる。2018年12月8日に海南省海口市で開催された第5回日中韓協力対話に出席した、中国国際経済交流センターの鄭新立副理事長は「日中韓FTA交渉が急速に進展すれば、中国が利益を得られるだけではなく、日中が共同してTPP11を推進する良好な条件をつくり出すことができる」とした(「中国新聞網」2018年12月10日)。前述の白明氏も「TPP11への加入には、日本などの態度をよく見極める必要がある」としつつ、「日中韓FTA、RCEP、TPP11などの推進に当たり、現在の日中両国には大きな協力の余地がある」と、日中が果たす役割に期待を示している(「21世紀経済報道」2018年10月19日)。そのほか中国では、台湾の加入問題や、TPP11発効後の日米物品貿易協定(TAG)交渉の展望などに注目する報道があった。

(注1)TPP11協定における、国有企業と私有企業との間の平等な競争条件を確保することに関する重要なルール。

(注2)同発言は、人民銀行ウェブサイトに掲載されている。

(小宮昇平)

(中国)

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