ロシアで風力発電機部品の製造現地化が進む

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2018年12月19日

ナノテク分野の国策投資企業であるロスナノは12月13日、ロシア南部ロストフ州タガンロクにおいて、スペインの風力発電装置製造企業ウィンダール・レノバブルス、ロシア鉄鋼製造大手セベルスタリと共同で、風力発電機のタワー部分の製造を開始した。ロスナノは2018年に入り、風力発電機のナセル(注1)とブレード(回転翼)部分のロシア国内での製造を開始しており、風力発電機の国産化を積極的に進めている。

ロスナノのプレスリリースによると、タワー部分の製造現地化はロシアでは今回が初めてとなる。第1段階の投資額は7億5,000万ルーブル(約12億7,500万円、1ルーブル=約1.7円)で、合弁企業「バシュニ・VRS」(出資比率:ウィンダール51%、ロスナノ24.5%、セベルスタリ24.5%)が行う。投資に当たり、ロシア産業商務省、ロストフ州政府、セベルスタリ、バシュニ・VRSとの間で特別投資契約(SPIC、注2)が締結された。製造するタワーの高さは120メートル、重さは270トンまでを予定。製造に使用する鋼材は、セベルスタリが供給する。当初の販売先(顧客)は、ロスナノと公開型株式企業フォルトゥムが出資して設立した風力エネルギー発展基金とその子会社ベトロパルキFRVで、ベトロパルキFRVはロシア政府の再生可能エネルギー発電計画の一部を担っている。

また、ロスナノはデンマークの風力発電機器製造大手ベスタスと共同で、2018年4月にノブゴロド州ジルジンスクにおいて、ナセルと制御系装置の組み立てを開始した。12月4日には、ウリヤノフスク州で風力発電機のブレードの製造を開始している。

風力発電・同機器分野では、他のロシア大手企業も欧州大手と共同で市場に参入している。国営原子力会社ロスアトムとオランダ企業ラゲルウェイは、機器製造に向けた合弁企業を設立した。独立系電力卸売りエネルロシアとシーメンス・ガメサ(本社:スペイン)も事業協力を推進しており、12月11日にシーメンス・ガメサは、エネルロシアが実施する北極圏のコラ半島(ムルマンスク州)での風力発電事業向けのタービン57機の受注を発表している。

(注1)発電機などを格納する大きなボックス。

(注2)連邦政府、地方政府、投資家の3者間での締結される契約で、政府側からは税恩典や補助金などによる支援、投資家側からは現地化推進や技術移転などの具体的目標値が明記される。

(高橋淳)

(ロシア)

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