12月30日にバングラデシュ総選挙、行方を占うカギは若者の動向

(バングラデシュ)

ダッカ発

2018年12月21日

バングラデシュ総選挙が12月30日に実施される。バングラデシュは一院制(300議席)の小選挙区制で、前回2014年の際は最大野党バングラデシュ民族主義党(BNP)が選挙をボイコットしたため、今回は10年ぶりに野党が参加する。政権与党のアワミ連盟(AL)は7%超と好調な経済成長率と国民所得の向上を成果としてアピールし、BNPは民主主義を取り戻すことを掲げている。

特にBNPは、前回選挙で大規模な抗議活動を行ったことにより、多くの死傷者を出した反省から、2018年2月にカレダ・ジア党首が収監された後も、主だった抗議活動はしていない。そのジア党首は3選挙区で立候補を届け出たが、いずれも選挙管理委員会から却下され、立候補できていない。そのため、BNPは1971年の建国時に憲法草案に携わった、独立時の英雄の1人であるカマル・ホセイン氏を候補者に担ごうとしたが、最終的に同氏は立候補していない。

BNPを中心とする野党連合の求心力が弱まっている一方で、バングラデシュは伝統的に反現職傾向が強いといわれている。地場の政治アナリストは「地方の農村部に住む多くの貧困層は経済成長の恩恵にあずかっておらず、10年間の政権に飽きており不満が鬱積(うっせき)している」とした上で、「こうした不満が一気に表面化すれば、野党の勝利も十分にあり得る」と指摘する。また、今回の選挙の行方を占う上で、重要な点が若者の動向だ。全有権者のうち、35歳以下が70%を占めている。こうした中、与党ALは2018年7月末の学生を巻き込んだバス事故による学生運動を受けて、道路交通法を改正した。また、独立時に貢献した子孫の就職を優遇するクオータ制度の一部について、長らく続いた学生からの批判を受けて廃止した。さらに、与野党ともに高齢となった党員の公認を取りやめ、新たに若い候補者を擁立することによって若者票の取り込みに注力している。

総選挙の結果は、バングラデシュにおける日本の円借款による大型インフラプロジェクトの計画や進捗にも大きな影響を与える可能性があり、その動向から目が離せない。

(新居大介)

(バングラデシュ)

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