米中首脳会談、両国の声明に相違点

(中国、米国)

北京発

2018年12月05日

G20首脳会議が開催されたアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで12月1日に行われた米中首脳会談の後に、両国政府が発表した声明には相違点があることから、合意内容についてさらなる検証が求められる。

ホワイトハウスの12月1日の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、トランプ大統領は2018年9月から5,745品目(2,000億ドル相当)に課している制裁関税の税率10%を、2019年1月1日から25%に引き上げるとしていたが、これを暫定的に留保することで合意した。

これに加え、強制的な技術移転、知的財産権の保護、非関税障壁、サイバー攻撃、サービス・農業の5分野の構造改革について、交渉を直ちに開始することで合意した。ただし、90日以内に交渉が合意に達しない場合は、前述の10%の関税率を25%に引き上げるとした(2018年12月3日記事参照)。

一方で、中国外交部の12月2日の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、両国首脳が新たな追加関税を停止することで合意したことは発表したものの、構造改革の交渉開始や90日の交渉期間の設定、合意に達しない場合の関税率の引き上げについては言及しなかった。また、両国首脳がそれぞれの経済チームに対し、全ての追加関税の撤廃に向けて、互恵・相互利益に基づく具体的な合意ができるよう交渉を加速させると指示することでも合意したとしているが、「全ての追加関税の撤廃」という表現はホワイトハウスの声明にはない。

さらに、ホワイトハウスの声明では、中国が直ちに米国の農家から農産物の購入を開始することに合意し、中国が貿易不均衡を緩和するために相当量の農産物、エネルギー、工業製品などを米国から購入することにも同意する予定とあるが、それについても中国側の発表には相違が見られた。

外交部の声明では、中国は新たな改革開放の過程や国内市場の需要に基づいて市場を開放し、輸入を拡大するとの内容にとどまり、ホワイトハウスの声明にあるような具体的な品目などについては触れなかった。

台湾問題について、外交部の声明では、習近平国家主席が中国政府の原則的な立場を説明し、米国政府は「1つの中国」政策を継続すると表明したとしているが、ホワイトハウスの声明では言及されていない。

また、トランプ大統領は会談後の12月3日にツイッターで「中国が米国から輸入する自動車への関税の引き下げおよび撤廃に合意した。現行税率は40%だ」とのコメントを発信しており、米国産自動車の関税について中国政府がどのような方針を示すか注目される。

外交部の耿爽報道官は12月3日の定例記者会見で、両国政府の声明に相違点があることについての質問に、「中国は既に声明を発表しており、詳細に読むことを勧める」と述べ、相違点についての詳細な説明はしなかった。

(藤原智生)

(中国、米国)

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