国内法優先を促す発議、国民投票で否決

(スイス)

ジュネーブ発

2018年11月28日

スイスで11月25日に行われた国民投票では、2件のイニシアチブ(国民発議)、1件のレファレンダム(連邦議会で承認された法律の是非を問う制度)がかけられた。「国内法優先イニシアチブ」など2件のイニシアチブが否決され、「社会保険法の改正レファレンダム」は可決された。

1件目の「国内法優先イニシアチブ」は、66.2%の投票者および全州が反対し、否決された。本件は、右派政党のスイス国民党(SVP)が発議したもので、スイス国内法を国際条約よりも優先させることを求めた内容だった。この発議の背景には、SVPが国民投票で可決されたにもかかわらず、国際条約にそぐわないことが理由で実現していない事態を批判していたことがある。

例えば、2014年の国民投票において、SVP発議による「大量移民反対イニシアチブ」が可決された。これは、欧州からの移民の数を制限するため、国が1年間に受け入れる外国人労働者数を制限するものだ。しかし、このイニシアチブ内容は、EUとの「人の移動の自由」に関する2国間協定など国際条約に反するとして、実現はしていなかった。

今回の「国内法優先イニシアチブ」が承認された場合、国内法との整合性によっては、国際条約を破棄しなくてはならず、諸外国との関係においても大きな影響が出るとの見方から、政府、議会、SVP以外の政党、ビジネス関連機関などは、国民にイニシアチブの否決を訴えていた。

2件目の「牛の除角反対イニシアチブ」は、国が農家に補助金を出し、除角をやめるよう奨励するというものだ。54.7%の投票者および18の州が反対し、否決された。

3件目の「社会保険法の改正レファレンダム」は、保険金の不正受給が疑われる者の行動調査を実施するため、2018年3月に連邦議会で議決・承認された法案改正の是非を問うもの。64.7%の投票者および21の州が賛成し、可決された。監視調査による被保険者のプライバシー侵害への懸念から、今回、レファレンダムが実施された。今回の可決により、保険会社は、探偵を雇い、定められた公共スペースの中であれば、写真やビデオを使用して調査を行うことができるようになった。

(城倉ふみ)

(スイス)

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