次期大統領のAMLO氏、12の法律改正案を発表

(メキシコ)

メキシコ発

2018年07月17日

メキシコ次期大統領のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(通称:AMLO)氏は7月11日、所属する国家再生運動(Morena)の次期国会議員と会合し、次期政権が国会で目指す12の法律改正案を発表した。Morenaを筆頭とする左派政党連合が現時点で上院の53.8%、下院の60.4%の議席を得て、両院で過半数を占めることが濃厚なため、9月3日から始まる次期国会(次期国会議員で構成)での法改正を目指す。

発表された法律改正案は次のとおり。詳細は添付資料参照。

  1. 公職の給与の上限に関する憲法施行法の制定
  2. 公共治安省の復活
  3. 公職に就く者の不逮捕特権の完全な剥奪
  4. 重大犯罪と見なされる犯罪の追加
  5. 2019年の予算法案策定スケジュールの前倒し
  6. 大統領警護隊の国防省への統合
  7. 水資源の長期保全に関する措置の撤廃
  8. 教育改革関連法の改定
  9. 公共教育の無償化
  10. 大統領任期途中の国民信任投票制度創設と国民投票制度の円滑化
  11. 北部国境地帯の最低賃金の引き上げ
  12. 国家緊縮計画の実施

高級官僚の給与削減による行政の質の低下に懸念

発表された法改正の多くは、政治制度や政府機関の組織に関するものが多く、経済政策に関連する法改正は少ない。ただし、北部国境地帯の最低賃金引き上げについては、その水準と波及効果にもよるが、同地帯で保税加工を行う日系企業には影響を与える可能性がある。

進出企業の視点から今回の法改正案で懸念されるのは、(1)や(12)に関連して行われる公務員の給与削減だ。報道によると、AMLO氏は大統領の給与半減だけでなく、年収100万ペソ(約600万円、1ペソ=約6.0円)以上の公務員の給与を(全体で)半減することを計画している(「レフォルマ」紙7月12日)。憲法第127条の第III項は、いかなる公務員の給与も上級職位の給与を上回ることはできないと規定しているため、年収100万ペソ超の公務員の給与が大幅に減らされると、100万ペソ以下の公務員の給与にも影響が出る可能性が大きい。

政府の情報公開サイトによると、経済省の局長補佐級の給与は年収100万ペソを超え、課長級でも100万ペソを超える職があり、30~40歳代前半で高学歴な場合が多い。政権交代で給与が大幅に削減された場合、民間部門との賃金格差が広がり、官僚が省庁から民間に転職すると、官僚の質と行政能力の低下につながるため、行政手続き面において進出企業のビジネス環境が悪化することが懸念される。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

ビジネス短信 403f6956568de9e8