APEC閉幕、米中対立で初めて首脳宣言の採択断念

(APEC、シンガポール)

シンガポール発

2018年11月21日

パプアニューギニアの首都ポートモレスビーで開かれたAPEC首脳会議が11月18日、閉幕した。貿易や地域協力などのアジェンダで米国と中国の意見が対立し、議長国のパプアニューギニアが首脳宣言の採択を断念する事態となった。採択に至らなかったのは1993年に首脳会議を開催して以来、初めて。議長国のピーター・オニール首相は閉幕後の記者会見で、宣言不採択の理由を「WTO改革に関する文言で合意できなかった」と説明した。

中国の習近平国家主席は首脳会議初日の関連会合で、「貿易戦争に勝者はいないことを歴史が証明している」と語り、「(中国が)保護主義および一国主義に対して明確に反対し、多国間の貿易体制を支えていく」と強調した。また、中国が進める「一帯一路」は地域における協力事業であり、地政学的な意図や他者を排除する目的はないと主張、さらに「WTOによる発展途上国に対する特別待遇および関税待遇が多国間の貿易体制の重要な基礎だ」と述べた。

これに対し、直後に演説した米国のマイク・ペンス副大統領は、中国の貿易不均衡に対する関税措置について、「中国がやり方を変えない限り、米国は方針を変更しない」との考えを示した。さらに中国のインフラ開発支援についても、支援を受ける国を念頭に、「国家主権を犠牲にしてまで外国債務を抱えてはならない」と述べ、中国のやり方を牽制した。

一方、シンガポールのリー・シェンロン首相は会見で深まる米中対立について言及し、11月末、中国の習国家主席と米国のドナルド・トランプ大統領がアルゼンチンで開催されるG20首脳会議で会談をする予定であり、「建設的な議論がされなければ、両国だけでなく世界各国へ損失がある」とコメントした。

2日間の日程で開催された同会議には21カ国・地域から首脳らが参加し、日本からは安倍晋三首相が出席した。2019年の次回首脳会議はチリがAPEC議長国としてホストする予定。

(藤江秀樹)

(APEC、シンガポール)

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