2035年までに原発14基を廃炉へ、大統領が表明

(フランス)

パリ発

2018年11月29日

マクロン大統領は11月27日、エネルギー移行に向けたフランスの国家戦略の基本方針を発表した。大統領はエネルギー消費を抑えるため、新たなかたちの移動システム(ライドシェア、カーシェアなど)を構築し、住宅の省エネ化投資を加速、100%リサイクルできる「未来工場」の開発を推進するとした。

エネルギー生産については、2022年に石炭火力発電所を閉鎖する一方、2030年までに陸上風力発電量を3倍に、太陽光発電量を5倍に拡大し、洋上風力発電についても2022年までにフランス西部サン=ナゼール付近に発電所を稼働させるほか、新たに4カ所の建設プロジェクトの入札を実施する方針を示した。

原子力発電については、原発依存度を50%まで引き下げる目標の達成期限を2035年に設定。2035年までに14基の原子炉〔各900メガワット(MW)〕を廃炉にすることを決めた。大統領は日程について、2020年夏にフランス最古のフェッセンハイム原発2基を廃炉にし、残りの12基を2025年から2035年までの10年間に廃炉にする。12基については、再生可能エネルギーの導入や蓄電技術の開発状況などをみながら、2030年までに4~6基を、2030年から2035年までに残りの原子炉を廃炉にする考えを示した。ただし、脱原発を意味するのではなく、大統領は、今後も原発稼働を継続すること、フランス電力会社(EDF)に対し低廉な電気料金を提供するため原発事業を継続するよう求めたことを明らかにした。

他方、燃料価格が高騰する中、一部の市民による抗議活動が強まっている炭素税(注)の引き上げについて大統領は、燃料価格高騰の大部分はロシア、サウジアラビア、イランなど産油国の動きによるものだと指摘しつつも、市民の購買力改善に向け、炭素税の見直しを公約。炭素税の引き上げ幅を、四半期ごとに原油の国際価格を考慮して設定するシステムを導入する意向を示した。

(注)2014年4月に、エネルギー消費を対象に導入された(2014年4月24日記事参照)。二酸化炭素(CO2)排出量1トン当たりの税率は2014年の7ユーロから毎年引き上げられ、2018年には44.6ユーロまで上昇している。

(山崎あき)

(フランス)

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