銀行株が急落、手数料禁止の政令案が引き金に

(メキシコ)

メキシコ発

2018年11月13日

メキシコ証券取引所(BMV)の主要株価指数であるS&P/BMV IPCは、11月8日の終値が44,190.25となり、前日から5.81%下落した。この下落率は過去7年間で最大。翌9日の終値は44,263.74で前日比0.17%増と持ち直したが、一時的には42,816.25まで下げるなど、前日の傾向を午前中は引き継いだ。

株価下落のきっかけは、11月8日の上院で金融サービスに関する透明性および規定に関する法案、ならびに信用機関法にさまざまな指令を加えるための政令案が発議されたことだ。与党・国家再生運動(MORENA)のカラベオ・カマレナ上院議員とモンレアル・アビラ上院議員による発議の具体的な内容は、銀行による数々の手数料の徴収を禁じるものだ。預金残高の照会、銀行店舗内のATMからの現金引き下ろし、クレジットカードによる現金引き出し、クレジットカードの無効化、小切手を用いた他行への送金などにかかる手数料などが対象とされる。

メキシコでは銀行の収入の約3分の1が手数料とされ、その徴収が禁じられるインパクトは大きい。このため、11月8日の午前中から銀行株を中心に株価の急落が始まった。11月9日の「エル・エコノミスタ」紙によると、11月8日の銀行株の終値は、バノルテが前日比11.90%減、インブルサが10.08%減、サンタンデールが8.12%減で、これら3行の株式の時価総額は1日で762億400万ペソ(約4,267億4,240万円、1ペソ=約5.6円)減じたことになる。銀行株の下落は他の業界の株価にも伝染し、ウォルマート・デ・メヒコが8.32%減、インフラエストゥルクトゥーラ・エネルヘティカ・ノバが7.16%減、家電等量販店のエレクトラが5.88%減となった。

アビラ上院議員は11月8日午後、「政令案が誰かに影響することはない。銀行についても、株価についても神経質にならないでほしい」とコメントし、沈静化に努めた。政令案そのものは、上院の大蔵公債委員会に送られて審議されることに加え、カルロス・ウルスア次期大蔵公債相も専門家に同政令案を評価してもらうとしている。従って、同政令案がそのまま法制化されるとは考え難いものの、MORENAならびに次期アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)政権の経済政策に、投資家や実業界が神経質になっていることが顕在化した可能性がある。

(稲葉公彦)

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