EU、ブレグジット後の車両型式認証めぐる混乱回避策示す

(EU、英国)

ブリュッセル発

2018年11月07日

欧州議会の域内市場・消費者保護委員会(IMCO)は11月5日、英国のEU離脱(ブレグジット)に際して、英国において車両型式認証を取得している自動車および関連部品などのメーカーが(英国以外の)EU加盟国で取得し直すことを認める規則案を採択した。賛成29に対して反対はゼロ(棄権1)で、ブレグジットをめぐる産業・社会の混乱回避が、欧州議会内の党派を超えて重要な課題となっていることをうかがわせる。今後、本会議での承認を経てEU理事会(閣僚理事会)と同規則案の確定に向けて協議を行う。

欧州の自動車産業に詳しい専門家によると、通常、EU域内で車両(自動車のほか、農業機械や建設機械などの輸送機器含む)を流通させる場合、当該車両がEUの検査基準に適合していることを証明する、EU加盟国の認証機関指定の技術機関が発行した試験報告書(テストレポート、注)が必要。しかし、ブレグジット以降、特に合意なく離脱する場合、英国の技術機関が発行したテストレポートがEU域内で無効になるリスクがあるため、車両メーカーを中心に合理的な制度運用を求めていた(2018年7月24日記事参照)。

合意なき離脱に備えた保険的措置

今回の規則案は、既に英国の技術機関が発行したテストレポートを取得したメーカーに、英国のEU離脱日までに(英国以外の)EU27カ国の技術機関にテストレポートの発行を求めることで、ブレグジット以降の車両型式認証をめぐる混乱が回避されることが期待されている。ただし、IMCOは「EU・英国で批准された離脱協定で別途定める場合はこの限りではない」としており、離脱協定にブレグジット以降の車両型式認証めぐる混乱回避策が盛り込まれれば、そちらを優先するとの見解だ。今回の規則案は合意なき離脱に備えた保険的措置ということになる。

なお、ブレグジット以降の車両型式認証めぐる対応について、EU加盟国は10月24日、欧州議会との交渉権限をEU議長国(オーストリア)に付与することで合意している。

(注)EU車両型式認証制度では、EU加盟国のいずれかの技術機関が発行したテストレポートを取得していれば、EU域内全体で有効。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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