第3四半期の実質GDP成長率は2.9%に鈍化

(香港)

香港発

2018年11月28日

香港特別行政区政府(以下、香港政府)統計処によると、2018年第3四半期(7~9月)の香港の実質GDP成長率は前年同期比2.9%(名目成長率は6.7%)だった(図参照)。第2四半期より0.6ポイント低下し、2016年第3四半期以来約2年ぶりに3%を割り込んだが、直近10年の年平均成長率(2.7%)を8四半期連続で上回った。季節調整済みの前期比成長率は0.1%と、前期より0.3ポイント上昇した。

図 香港の実質GDP成長率および需要項目別寄与度の推移(四半期ベース)

個人消費の伸びが鈍化

2018年第3四半期の実質GDPを需要項目別にみると、個人消費支出は前期(6.0%増)より0.8ポイント低下し、前年同期比5.2%増となった。良好な雇用・所得環境が消費意欲を下支えしたものの、株式市場が調整局面に入り、資産効果が弱まったことが影響した。特に、香港への来訪客による消費と耐久消費財の消費の伸びが目立って鈍化した。政府消費支出と合わせた実質GDP成長率への消費支出の寄与度は、3.7ポイントとなった。

固定資本形成は8.2%増で、前期より7.1ポイント上昇した。公共部門における建設投資は2.5%減だったが、民間部門における機器設備投資が24.1%増と2桁の伸びを示し、全体を押し上げた。在庫増減を含めた成長率への寄与度は3.5ポイントになった。

米中貿易摩擦の影響は徐々に表面化

財の輸出(実質ベース)は5.0%増と、前期(4.6%)より0.4ポイント上昇した。月別の財の輸出額をみると、7月、8月は前年同期比でそれぞれ10.0%増、13.1%増と2桁の伸びを示したが、9月は4.5%増と前月より8.6ポイント低下した。9月の財輸出が鈍化した要因について、香港政府統計処は「米中貿易摩擦の影響が出始めた」と分析している。ただし、2018年第3四半期全体でみると、米国での景気拡大を背景とした輸入需要に支えられるなど、主要国向けの輸出が好調だった。サービス輸出は3.1%増と、前期(5.9%増)より2.8ポイント低下した。特に、観光関連サービスと金融サービスの輸出の伸びが目立って鈍化した。財・サービス全体の純輸出の成長率への寄与度は、財の輸入の増加もあり、マイナス4.3ポイントとなった。

香港政府は、米中貿易摩擦や米国などの先進国における金融引き締めに伴う金融市場の変動など、香港を取り巻く外部環境のマイナス要素が増加しているとして、2018年通年の成長率を従来の予測値(3~4%)(注)の下限に近い3.2%と予測した。

(注)2018年第2四半期のGDP公表時(2018年8月)に発表。

(吉田和仁)

(香港)

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