ビジネスヨーロッパ、2019年経済見通しで通商摩擦リスクを指摘

(EU)

ブリュッセル発

2018年11月06日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は11月5日、2019年のEU(28カ国ベース)の実質GDP成長率を2.0%(2018年:2.2%)とする2018年秋季経済見通しを発表した。2019年のEU経済はこれまでの成長トレンドを持続する見通しだが、同連盟は「通商摩擦の過熱」と「人材(需給)ミスマッチ」をリスク要素として挙げている。

米中貿易紛争は欧州含む世界経済にとってのリスク

ビジネスヨーロッパの今回の発表によると、2017年以降のEU経済は長期的な成長トレンドを持続しており、2018年前半に若干の成長鈍化局面があったものの、2018年(通年)の実質GDP成長率はEU(28カ国)で2.2%、ユーロ圏で2.1%、2019年はEU(28カ国)で2.0%、ユーロ圏で1.9%となる見通し、とする。ただ、ビジネスヨーロッパはEUの実質GDP成長率を2018年春季経済見通しから、2018年について0.2ポイント、2019年については0.1ポイント下方修正している。

2018年春季経済見通しからの下方修正の原因としてビジネスヨーロッパが強調したのが、「通商摩擦の過熱」と「人材ミスマッチ」がEUの経済成長にとってリスクになり得るという点だ。同連盟は「通商摩擦の過熱」の事例として、米国と中国の貿易問題に言及し、「欧州を含めた、貿易相手に悪影響を及ぼしている」「2020年には世界のGDPを1%押し下げる可能性がある」と指摘した。また、EU・米国関係については、課題克服に向けてさまざまな協議(2018年7月26日記事参照)を進めているが、「(米国は)EU原産品に対する追加関税賦課措置を交渉テーブルから外したわけではない」とし、米国との通商摩擦がEU経済の足かせとなり得るリスクを指摘した。また、同連盟は「貿易紛争が懸念される今、まさにWTOの紛争解決メカニズムの有効性が問われている」と、WTO改革の必要性を示唆した。

他方、「人材ミスマッチ」について、同連盟は「社会のデジタル化は急速に進んでいる。しかし、デジタル技術を習熟した技能者に対する需要は満たされていない」と指摘し、労働市場における「人材ミスマッチ」が経済成長の阻害要因になり得るリスクに警鐘を鳴らす。マルクス・バイラー事務総長は「EU経済の阻害要因とならないように(デジタル時代に対応した)熟練技能者が必要だ」と語った。

その他のリスク要因として、ビジネスヨーロッパは、(英国のEU離脱に伴う)EU・英国間の将来関係が依然として不透明な点も挙げている。

(前田篤穂)

(EU)

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