大型ハリケーン「マイケル」、石油・天然ガス生産への影響は限定的
(米国)
米州課
2018年10月12日
メキシコ湾で発生したハリケーン「マイケル」は、勢力が5段階中2番目に強い「カテゴリー4」を保ったまま、10月10日午後、フロリダ州に上陸し、米国南東部に多大な被害をもたらした。内務省安全環境執行局(BSEE)によると、メキシコ湾海域(オフショア)の原油生産量の約40%、天然ガス生産の29%に相当する施設が、一時閉鎖された。しかし、米国全体の石油・天然ガス生産への影響は、短期かつ限定的といわれている。
その理由の1つ目が、米国の原油・天然ガスのほとんどが陸上シェール地域で生産されており、オフショアでの生産は、生産コストが安く埋蔵量が豊富な陸上シェール地域での生産に押され、近年縮小の一途をたどっているため。米国エネルギー情報局(EIA)によると、メキシコ湾岸海域での原油生産比率は2010年の28.3%から、2017年には17.9%へ、天然ガス生産比率は8.4%から3.2%へと低下している。
理由の2つ目は、今回のハリケーン「マイケル」の進路が、メキシコ湾海域の原油・天然ガス生産の一大中心地帯からそれていること。EIAの最近の分析によると、ハリケーンによるメキシコ湾での石油・天然ガス生産は、ハリケーンの強さよりも、むしろ進路によって影響が異なるという。メキシコ湾での石油・天然ガス生産は東部海底のミシシッピ・キャニオンから西部海底のアラミノス・キャニオンまで広がっている。今回の「マイケル」の進路は、東端のミシシッピ・キャニオンをかすめて米国南東部を北上している。
2017年10月のハリケーン「ネイト」は、メキシコ湾海域の原油・天然ガス生産の中心部に襲来しており、ハリケーンの強さはカテゴリー1にすぎなかったが、2017年8月のハリケーン「ハービー」よりも、石油・天然ガス業界に深刻かつ長期の影響をもたらした。
米国最大の原油ターミナルで唯一の深海港であるルイジアナ・オフショア・オイル・ポート(LOOP)は、今回のハリケーン「マイケル」襲来によって一時操業を停止していたが、10月11日に操業を再開した。LOOPは、200万バレルの原油を輸送できる大型の運搬船(VLCC)が入出港できる米国内の唯一の港湾施設。
(木村誠)
(米国)
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