新北米協定(USMCA)で化学品の原産地規則を柔軟化

(メキシコ、米国、カナダ)

メキシコ発

2018年10月26日

イルデフォンソ・グアハルド経済相は10月18日、全国化学産業協会(ANIQ)が主催した第50回化学産業フォーラムに出席しメキシコの化学産業の競争力を高めるため、9月30日に実質合意に至った新北米協定(USMCA)の原産地規則の交渉において、化学工業製品の原産地規則を柔軟化したと述べた。経済省は国内で生産されていない化学原料の一般関税率を引き下げるなどの競争力強化措置を導入してきたが、USMCAの交渉においては原産地規則を柔軟化することで対北米輸出を増加させることを狙ったとみられる。

米国通商代表部(USTR)のウェブサイト上で公開されているUSMCAの条文案の第4章(原産地規則)をみると、品目別原産地規則(PSR、Annex 4-B)の中に化学工業製品(HS28~38章)の原産性判断基準として、新たに化学反応基準など加工工程基準を導入している。加工工程基準とは、非原産材料に対して域内で化学反応(新たな構造の分子を生じること)など特定の加工工程が加わっていることを根拠に加工後の製品を原産品と認める原産性判断基準のこと。USMCAでは、TPPと同様の「化学反応」「精製」「混合および調合」「粒経の変更」「標準物質の生産」「異性体分離」の基準に加え、「バイオテクノロジー・プロセス」という加工工程基準が盛り込まれている。バイオテクノロジー・プロセスの加工工程とは、生物学的な培養や交配、遺伝子変換、細胞組織の生産、発酵などのプロセスを指す。なお、人工的な加工を施した後に、物質が異性体分離ではなく、個体分離しただけでは原産性を認めない「分離禁止」という基準も設けられた。その他の加工工程基準の詳細については、TPP解説書(原産地規則編)PDFファイル(0.0B)の17ページを参照。

原産地規則の章に規定される救済措置は現代化

USMCAの原産地規則では、自動車産業の原産地規則の厳格化(乗用車の域内原産割合75%以上、時給16ドル以上の地域の付加価値率40%以上など)が特に注目されているが、自動車産業の原産地規則を定める付属書ではなく、原産地規則の章の本体(第4章)に品目別原産地規則の達成を有利にするさまざまな救済措置が盛り込まれており、その内容はTPPの原産地規則内容に酷似している。デミニマス(僅少の非原産材料)の閾値(いきち)は7%から10%に拡大されているほか、非原産材料価格に含まれる原産材料の価格や域内加工費のトレーシングを可能にし、完全累積を実現している。これらの救済措置の内容についても、TPP解説書(原産地規則編)PDFファイル(0.0B)に掲載されている。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国、カナダ)

ビジネス短信 fee28106b3d90b22