9月のインフレ率は前月比6.5%に急上昇

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2018年10月22日

国家統計センサス局(INDEC)は10月17日、9月の消費者物価指数上昇率(インフレ率)が前月比6.5%、前年同月比40.5%になったと発表した。前月比の上昇率では2018年に入って最も高かった8月(3.9%)を上回った。1~9月期の累積インフレ率は32.4%に達し、6月にIMFと500億ドルの融資枠で合意した際に設定したインフレターゲット率の上限値(32%)を超えた。

インフレ率を産業別に前月比でみると、「交通」(10.4%)が突出し、「衣類・靴類」(9.8%)、「家財道具・住宅管理」(9.7%)などの上昇が目立った(表参照)。前年同月比でみても、「交通」(58.8%)、「住宅・光熱・その他燃料」(53.3%)といった、左派政権時代に国庫から補助金が多く充てられていた分野の上昇が目立つ。また、「通信」(50.0%)も高い上昇率となっている。

表 2018年9月の産業別インフレ率

9月のインフレ率の急上昇の背景には、8月末に政府がIMFと融資前倒しの協議に入るとの発表に伴う政治・経済の先行き不透明感の高まりによって、1ドル=約30ペソだった為替レートが約40ペソまで急落し物価に影響したとされる。現地紙「クラリン」(10月17日)は、10月に入ってもガスや燃料、食料などの値上げが行われていることから、高いインフレ率が続くとの見通しを伝えている。

また、中央銀行発表の現地民間エコノミストによる最新の経済見通しの集計値(REM)によると、2018年のインフレ率見通しは44.8%となっており、40.9%を記録した2002年を上回ると見込まれている。一方、中銀は10月から為替バンド制や通貨供給量の制限などによる新たな通貨・金融政策を講じており、一時は40ペソをうかがっていた対ドルレートが35~37ペソ台を推移するなど落ち着きつつあり、この数カ月でインフレ率のピークを越える可能性もある。ちなみに政府とIMFは2019年のインフレ率予測を20%台前半としている。

(紀井寿雄)

(アルゼンチン)

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