ブレグジット後の英国の関税割当、複数のWTO加盟国が認めず
(英国、EU)
ロンドン発
2018年10月29日
英国がWTOに提出していたブレグジット後の関税率や関税割当取り決めスケジュールに対して、複数のWTO加盟国が承認を留保した。英国はEUの関税率を踏襲し、輸入関税割当は過去の輸入実績に応じてEUと案分することで、速やかにWTOでの承認を得るもくろみだった。10月25日にリアム・フォックス国際貿易相が議会に宛てた書簡で明らかにした。
英国は7月24日にWTO事務局にスケジュールを提示。10月24日までに加盟国から異論がなければ、これが認められるはずだった。しかし複数国が承認を留保したため、今後英国はこれらの国と個別に交渉を始める。留保した全ての国から合意を得るには、時間を要するとみられる。
承認手続きは非公開のため、留保した国名や対象品目などは明らかにされていないが、国内外の報道によると、米国、カナダ、ロシア、中国、オーストラリア、ニュージーランドなど20数カ国が留保したという。農産品に対する関税割当に反対されたとみられ、2017年に英国とEUが方針を示した際にはブラジル、ウルグアイ、タイなどの国名も報じられていた。
英国の経済メディア・エムレックスによると、英国とEUの関税割当の案分は2013~2015年の3年間の英国と他のEU諸国の輸入量に基づき、総量は変えていない。例えばタイ産のコメの割当は現在4,313トンだが、英国とEUの割当方針では、ブレグジット後にEUがその84.9%に当たる3,663トン、英国が残りの15.1%、650トンとなる。しかし反対国は、輸入割当の案分にはEU域内移動などが考慮されていないことなどから、ブレグジット後の英国とEUへの輸出が減少すると考えているようだ。
今回承認には至らなかったものの、英国とEUのブレグジット交渉中は提示したスケジュールに基づく関税率と輸入割当が暫定適用されるため、実務上の問題は生じない見込みだ。また以前から複数の農産品輸出国が懸念を示していたため、フォックス国際貿易相は書簡で、留保は予想されていた、との見方を示した。しかし同相は2017年、WTOでのスケジュールの承認が最優先事項で、EUの現行自由貿易協定(FTA)の継承や新たなFTA交渉はその次になるとの考えを示していた。
同相を含め離脱強硬派はブレグジット後の通商交渉を楽観視する傾向にあるが、専門家は今回の留保を受けて、今後同相らは通商交渉の厳しい現実に直面するとみている。
(宮崎拓)
(英国、EU)
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