上半期の対外直接投資、前年同期比45.7%減と低調

(スペイン)

マドリード発

2018年10月16日

スペイン産業・商業・観光省によると、2018年上半期の対外直接投資(届け出ベース、ネット、フロー)は前年同期比45.7%減の46億1,584万ユーロとなった。大型案件が少なく全体的に低調で、最大案件は、2月のアブダビ政府系ムバダラ開発公社傘下の石油大手セプサによるアブダビ国営石油(ADNOC)の2海上油田の権益取得(12億ユーロ)だった。

業種別では、自動車や製薬を中心に製造業が5割強を占め、前年同期比75.7%増となった(表1参照)。電力・ガス分野では大幅な引き揚げ超過となったが、これはエネルギー大手ナトゥルジー(旧ガス・ナトゥラル・フェノサ)が規模拡大から利益拡大戦略に転じ、イタリアとコロンビア事業を売却したことが主な理由となっている。

表1 スペインの業種別対外直接投資(届け出ベース、ネット、フロー)

国・地域別では、実質的(注)な最大の投資先は英国だったが(表2参照)、サンタンデール銀行による親子会社間の勘定がほとんどを占めた。

表2 スペイン対外直接投資の上位国(届け出ベース、ネット、フロー)

発表ベースでも少ない大型案件

2018に入って9月までに発表された案件をみても、大型のものは少ない。10億ユーロ超の案件は、3月発表のアバンカ(ベネズエラのバネスコ銀行傘下)によるドイツ銀行のポルトガルのリテール事業買収発表、8月に完了した旅行予約システム大手アマデウスによる米ホテル向けシステム大手トラベルクリックの買収のみだった。

インフラ・機器分野では、建設大手アクシオナが5月にチリの空港地上ハンドリング会社アンデス・エアポートサービスを買収。鉄道車両製造CAFが9月にポーランドのバス製造ソラリスを買収して新分野に参入した。

フィンテック投資では、サンタンデール銀行が2月に米国のスマートフォン完結型リアルタイム住宅ローンサービス「Roostify」に出資、BBVA銀行が3月に英国モバイルバンクのアトムの持ち株比率を39%に引き上げた。

製薬では、グリフォルスが8月に米国の血漿(けっしょう)収集センター運営のバイオテスト・ファーマシューティカルを買収、アルミラルが9月に米アラガンの皮膚科薬事業を取得するなど、対米投資が相次いだ。

アジアへの投資では、自動車部品CIEオートモーティブが6月にインドの自動車大手マヒンドラとの合弁会社への出資比率を56%に引き上げ、金属リサイクル大手ベフェサは9月に中国初の拠点となる製鋼ダストのリサイクル工場建設計画を発表した。

対日投資では、自動車部品大手ゲスタンプが4月に日本初の生産拠点となる熱間プレス工場を三重県に開設、2018年内には本格稼働する予定だ。

(注)第三国からの配当・キャピタルゲインを、スペイン経由で親会社の所在国などに無税で還流できる税制優遇措置「ETVE」の案件を除いた、実質的な直接投資でみた場合。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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