欧州委、イタリアに予算計画案修正を要請

(EU、イタリア)

ブリュッセル発

2018年10月25日

欧州委員会は10月23日、イタリアの2019年度の予算計画案の修正を求める前例のない見解を発表した。同国の予算計画案に対GDP比2.4%の財政赤字が盛り込まれたことを受けたもので、2013年にユーロ導入国の予算計画案の作成・評価制度が導入されて以来、初めて欧州委が加盟国に予算案の修正を求める事態となった。イタリアは、11月13日までに修正した予算計画案を提出しなければならない。

域内の財政政策の監視と調整の枠組み「ヨーロピアン・セメスター」では、ユーロ導入各国の中期予算目標や根拠となる経済予測などを盛り込んだ「安定化プログラム」を欧州委が評価し、「国別勧告」案を作成する仕組みが導入されている。この勧告は、欧州理事会により承認、EU理事会(閣僚理事会)により採択される。その後、ユーロ導入国は翌年度予算の採択に向けて予算計画案を作成し、欧州委が国別勧告などに基づき審査、見解を公表することが定められている。

イタリアは4月に発表した安定化プログラムで、2019年の財政赤字を対GDP比0.8%に抑制する目標を盛り込んでいたが、予算計画案の財政赤字は2.4%と、3倍に膨らんでいた。また、国別勧告でイタリアに対し改善を求めていた「構造収支」(景気循環的要素を調整し、一度限り・一時的な収支を排した財政収支)も悪化する内容となっていた。

イタリアの公的債務残高を懸念

欧州委のピエール・モスコビシ委員(経済金融問題・税制・関税同盟担当)はイタリアの予算計画案を「明白な逸脱である上、かつ意図的なものだ」と批判。「欧州委は、イタリア政府の国内政策の優先事項の選択には干渉しない」としつつ、対GDP比60%以下が目標の公的債務残高がイタリアでは131.2%(2017年)となっているとして、経済への悪影響に懸念を表明。イタリアがEUの投資イニシアチブやEU基金、財政規律の柔軟な運用(2015年1月29日記事参照)の大きな恩恵を受けてきたことを強調しつつ、EUが定める枠組みを踏まえてイタリア政府との対話を継続する考えを示した。

(村岡有)

(EU、イタリア)

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