欧州議会、非個人データの自由な移動に関する規則案を可決

(EU)

ブリュッセル発

2018年10月09日

欧州議会は10月4日、本会議でEU域内における非個人データの自由な移動に関する規則案を可決した。可決された法案は、EU理事会(閣僚理事会)と議会が合意した修正が反映されており、理事会でも正式に承認される見通しだ。

「第5の自由」を確立する規則

EUは、ビッグデータなどデータ技術を活用した「データ経済」の推進を、早急に取り組むべき課題に位置付けていた(2017年6月29日記事参照)。これを受けて、欧州委員会は2017年9月に非個人データの国内での保存・処理を義務付ける加盟国の規定(データ・ローカリゼーション)の原則廃止や、加盟国監督機関に対する域内の非個人データへのアクセス権の保証などからなる同規則案を発表していた(2017年10月20日記事参照)。

欧州委のアンドルス・アンシプ副委員長〔デジタル単一市場(DSM)担当〕は、欧州議会での法案可決を受けて、「デジタル経済・社会にはデータが欠かせない。この規則はDSMの重要な柱を完成させるものだ」と、採択を歓迎するコメントをツイートした。

一方、欧州議会において同規則案の報告者を務めたアンナ=マリア・コラッツァ=ビルト議員(欧州人民党グループ所属、スウェーデン選出)は「この規則は事実上、データ(の移動)をEU単一市場における(人・モノ・資本・サービスに続く)第5の(移動の)自由として確立するものだ。デジタル経済を脅かすデータ保護主義を抑制し、人工知能(AI)やクラウド・コンピューティング、ビッグデータ分析への道を開くものだ」と強い期待を示した。

また、EUの情報通信技術(ICT)関連産業団体であるデジタルヨーロッパのセシリア・ボネフェルト=ダール事務総長は同規則について、「グローバルな模範となるもので、真のデジタル単一市場への熱意を示すものだ。データの活用によってAIの利用が促進され、健康の増進や児童教育のソリューション、社会的課題の解決のための科学研究の前進が期待される」と述べた。

なお、欧州議会が発表したプレスリリースによると、本規則案はEU理事会で11月6日に採択されることが見込まれている。採択後、官報掲載日から6カ月後に適用が開催されるとしている。

(村岡有)

(EU)

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