EU環境相理事会、乗用車CO2排出量の35%削減に合意

(EU)

ブリュッセル発

2018年10月12日

EU環境相理事会は10月10日未明、ルクセンブルクで9日から開催されていた同理事会で、車両から排出される二酸化炭素(CO2)量を、乗用車については2030年までに35%削減(2021年比)、バンについては同30%削減とする目標に合意したと発表した。欧州自動車産業界はCO2削減の重要性を認識しつつも、国際競争力を奪う大幅な削減には反対の立場で、このCO2排出規制法案(原案)を提出した欧州委員会、これに厳しい規制強化の法案修正を加えた欧州議会(2018年10月4日記事参照)、EU理事会の3者での意見調整を求めている。

欧州自動車産業界は競争力を奪うと反発

今回のEU環境相理事会での合意内容は、同法案のうちCO2排出量削減目標について、2021年時点の水準との比較で、乗用車については2030年までに35%削減(中間目標:2025年までに15%削減)、バンについては2030年までに30%削減(2025年までに15%削減)としている。欧州議会は乗用車・バンともに、2030年までに40%削減(2025年までに20%削減)と規制厳格化の方向で、欧州委の提案に修正をかけていた。EU環境相理事会は、乗用車の2030年時点での水準を欧州委の当初提案の30%削減から35%削減に引き上げたが、その他は欧州委原案に戻した格好だ。

欧州自動車工業会(ACEA)のエリック・ヨナー事務局長は発表と同日付の声明で、今回のEU環境相理事会での合意について「欧州議会の修正案と比べると、極端ではない」としたが、「(欧州)自動車産業の競争力や雇用などに悪影響を及ぼしかねないリスクが依然としてある」と指摘して、警鐘を鳴らす。また、同法案が自動車メーカーに、電気自動車(EV)のほか、走行1キロ当たりのCO2排出量を50グラム未満に抑える新車の市場シェアに数値目標を課そうとしていることについて、ACEAは「産業界の実情に整合しておらず、技術的中立性の原則にも反する」との見解を明らかにした。また、ヨナー事務局長は欧州委、欧州議会、EU理事会の3機関には「環境保護とともに、欧州製造業の産業基盤にも配慮した最終合意に向けて調整を進めてもらいたい」とも述べた。

欧州自動車部品工業会(CLEPA)も同日付の声明で、「欧州委提案については難易度は高いが、妥当な内容だった」と指摘。欧州委提案を大幅に上回る目標設定について「欧州の自動車部品産業の基盤をリスクにさらす」と批判した。

(前田篤穂)

(EU)

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