アフトワズ、筆頭株主が全株取得し上場廃止へ

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2018年10月02日

自動車製造最大手アフトワズの筆頭株主である、フランスのルノーとロシアの国家持ち株会社ロステフの合弁企業「アライアンス・ロステック・オート」は、モスクワ証券取引所で流通しているアフトワズの全株式を取得し、上場を廃止する予定だ。

9月28日付アフトワズの発表によると、7月から実施していた義務的公開買い付け(注1)の結果、アライアンス・ロステック・オートは持ち株比率を83.5%から96.6%に拡大した。アフトワズのスクボルツォフ会長は上場廃止の目的を、「資本の再編成で負債を清算し、簡潔で素早い企業判断によって経営効率を高める」ためと説明している(注2)。

アフトワズは2013年以降、通期決算で純損失を継続して計上。特に2015年通期の純損失額は739億ルーブル(約1,330億2,000万円、1ルーブル=約1.8円)に上り、資本再構成の必要性に迫られていた。このため、2016年12月の公募増資で261億ルーブルの資金を調達。さらに2018年春に実施した第三者割当増資ではアライアンス・ロステック・オートがアフトワズの債権614億ルーブル分の株式化を行い、アフトワズ株の保有率を64.6%から83.5%に引き上げていた。今回の義務的公開買い付けでは少数株主の中で最大株主だったキプロス登記の投資銀行「ルネサンス・セキュリティーズ」が、保有していた11%超のアフトワズ株を全て売却したとされる(「ベドモスチ」紙9月28日)。

金融グループ「BKS」の個人コンサルタント部門「BKSプレミエル」で投資戦略を担当するアンドレイ・バフチン氏は、筆頭株主による全株取得の影響として、経営判断の迅速化や決算公開などの株式上場維持にかかる諸費用削減などの利点を挙げる一方、株式が非公開となることで今後の増資が難しくなる懸念を指摘している(プライム通信9月26日)。

(注1)ロシアの株式会社法では、株式保有比率が75%を超えた時点で義務的公開買い付けを行う義務を定めている。保有率が95%を超え、かつこのうち10%を公開買い付けで取得した場合に強制買い取りを実施する権利を付与している。

(注2)ただし、アライアンス・ロステック・オートが全株取得しても、上場廃止の手続きには数カ月かかるとの見通しをルノーのマウレ上席副社長は示している。

(市谷恵子)

(ロシア)

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