中銀、住宅ローンの融資基準を厳格化

(タイ)

バンコク発

2018年10月12日

中央銀行であるタイ銀行(BOT)は10月4日、住宅市場の投機的な動きを抑制するため、住宅ローンの融資基準を厳格化すると表明した。金融機関による融資額は、資産価格1,000万バーツ(約3,400万円、1バーツ=約3.4円)以上の住宅に対してその80%が上限とされたことから、今後は住宅購入者は最低でも20%の頭金を準備する必要がある(従来は20%の頭金の準備の推奨にとどまっていた)。セカンドハウスに対する融資についても上限が設定された。今後、公聴会を経て、11月に告示され、2019年1月から施行される予定だ。

住宅市場の投機的動きを懸念

BOTは以前から、住宅市場における投機的な動きにより不動産セクターの脆弱(ぜいじゃく)性が高まっていると懸念を表明していた。BOTのウィラタイ総裁は9月24日の講演において、「住宅市場(特に高層コンドミニアム)における投機的な動きが拡大し、需要が人為的に作り出されていることが、住宅ローン分野における不良債権比率(3.39%:2018年第2四半期末時点)を高めている」として、「住宅市場の投機的行動を抑制するためにマクロ・プルーデンス政策(注)が必要となる場合は、公式に発表する」と述べていた。また、四半期ごとに公表している「金融政策報告」(Monetary Policy Report)においても、ある地域のコンドミニアムの供給が過剰になっており、その動向を注視する姿勢を示していた。今回の措置はその一環とみられる。

一方、アピサック財務相は、ウィラタイ総裁の発言に対し、「住宅バブルが形成されているならば、デベロッパーが供給を絞るのが普通であり、現在も供給が継続しているということは、デベロッパーは需要が拡大していると判断していることを示している。中央銀行が不動産市場のリスクを分析する必要はあると思うが、景気の回復により借り手の所得も増えていることにも留意しなければならない」と述べていた。

(注)金融システム全体のリスクの状況を分析・評価し、それに基づいて制度設計・政策対応を図ることを通じて、金融システム全体の安定を確保するための政策のこと。

(阿部桂三)

(タイ)

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