南アの新財務相に元中銀総裁が就任、市場は好感

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2018年10月12日

南アフリカ共和国のラマポーザ大統領は10月9日、辞意を表明したンフランフラ・ネネ前財務相に代わり、元南アフリカ準備銀行(中央銀行)総裁のティト・ムボウェニ氏を新財務相に指名したと発表した。2018年2月に大統領に就任したラマポーザ氏は、経済再生・汚職撲滅を公約として、政権誕生直後に内閣改造を実施している。ネネ氏は前ジェイコブ・ズマ政権時に財務相を務め、財政再建派として手腕を発揮するも、ズマ氏との対立がうわさされ突如解任されたが、ラマポーザ政権下で再び財務相に起用された。

他方で、ネネ氏自身も、ズマ前大統領や与党・アフリカ民族会議(ANC)幹部との癒着・汚職容疑に問われる政商グプタ氏に接触していたとの疑惑が浮上した。ネネ氏は10月3日に実施された証人喚問において、以前は否定していたグプタ家への訪問の事実を認め、10月9日に辞意を表明した。

後任のムボウェニ氏は59歳。英国イーストアングリア大学で開発経済学修士号を取得し、南アのビッツウォータースランド大学名誉教授の称号を持つ。故ネルソン・マンデラ政権時には、労働相として活躍した。1999~2008年に黒人初の中銀総裁を務めた間、最大の功績として、外貨準備高を4倍の400億ランド(約3,080億円、1ランド=約7.7円)に増加させ、マクロ経済安定化に導いたことで知られる。その後はビジネス界に転身。自身で投資会社を設立して成功を収めたほか、南ア採金最大手アングロゴールド・アシャンティやBRICS開発銀行などの会社・機関役員、米国証券大手ゴールドマン・サックスの国際アドバイザーを務めるなど、南アきっての経済・ビジネス通として知られる。また、本人は政治的独立性が高く、公正で主義主張がはっきりした人物としても広く知られており、与党ANCの急進派が要求する中銀の国有化議論に対しても真っ向から否定する立場を取っている。市場も、ムボウェニ氏の財務相就任とラマポーザ大統領の今回の決断を好意的に受け止めている。

ネネ氏の辞任を受けて、通貨ランドは一時1ドル=15ランドまで下落したが、ムボウェニ氏就任発表後に1ドル=14.66ランドまで持ち直した。南ア国内では目下、10月25日にムボウェニ新財務相が発表する中期予算方針に注目が集まっている。

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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