米議会はUSMCA支持に必要な関心事項を提示

(米国、カナダ、メキシコ)

ニューヨーク発

2018年10月03日

10月1日にトランプ政権が公表した北米自由貿易協定(NAFTA)新協定(USMCA)(2018年10月2日記事参照)について、貿易政策を所管する下院歳入委員会のケビン・ブレイディ委員長(共和党、テキサス州)は合意成立を歓迎外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますする一方、「新協定の条文が遂に公開され、国民や議員は協定案を詳細に分析することが可能になった」と述べ、協定自体に関する支持は留保した。「サンセット条項や紛争解決条項が(事業の)確実性を高め、米国製の製品やサービスの販売促進につながるものかを詳細に検討する」とし、「これらの事項について、トランプ政権と引き続き協議を行うことを楽しみにしている」と語っている。

上院財政委員会のオリン・ハッチ委員長(共和党、ユタ州)も、3カ国での合意成立を歓迎外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしつつ、「今回の協定が大統領貿易促進権限(TPA)法(注)の定める高い基準を満たしているかを審査することを楽しみにしている」として、協定への全面的な支持は表明しなかった。

民主党は中間選挙後を視野にトランプ政権に協議を要求

下院歳入委員会民主党トップのリチャード・ニール少数党筆頭委員(マサチューセッツ州)もカナダを含めたかたちで合意が成立したことを評価外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした一方、「労働者の権利や環境の保護という、民主党議員の支持を得る上で常に必要な条項に対するこの協定の執行力が、現行NAFTAやオバマ大統領の環太平洋パートナーシップ(TPP)協定を実質的に上回っているかを確認する必要がある」と述べている。また、「NAFTAの欠陥はよく知られており、多くの批判者がいる」「新NAFTAを支持するための基準は高い」とトランプ政権を強く牽制した。

上院財政委員会のロン・ワイデン少数党筆頭委員(民主党、オレゴン州)も声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおいて、労働者の権利と環境保護に関する規定が執行可能なものとなっているかが、USMCAに対する支持へのカギとなることを示唆している。

TPA法は、協定署名後105日以内に当該協定が米国経済や産業に及ぼす影響に関する報告書を大統領と議会に提出することを、米国際貿易委員会(USITC)に義務付けている。こうしたTPA法に定められた手続きなどを考慮すると、議会でのUSMCAの実施法案の批准は年明けになる可能性が高く、11月の中間選挙を経た新議会が担うことになる。各種世論調査などによると、中間選挙では、民主党が下院の過半数を奪還する可能性が高いとの見方が強くなっており、通商専門誌「インサイドUSトレード」(10月2日)によれば、民主党議員はUSMCAの議会通過には同党の支持が必要になるとし、トランプ政権に協議を呼び掛けている。

(注)米国憲法では、外国との通商関係は議会が管轄しているが、TPA法は、この通商交渉に関する権限を大統領に一時的に付与するもの。TPAが大統領に与えられている場合、議会に対する報告・相談義務など、TPA法に定められた目的や手続きにのっとって政権がまとめた通商協定法案は、議会で修正を受けずに賛否のみの採決に付すことができる。

(鈴木敦)

(米国、カナダ、メキシコ)

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