中国テンセントがフィンテック大手ヌーバンクに出資

(ブラジル、中国)

サンパウロ発

2018年10月23日

ブラジルのフィンテックで、ユニコーン企業にも数えられるヌーバンク(Nubank)は10月9日、中国のテンセント(Tencent)からの出資を受けることを明らかにした。出資額は9,000万ドルとみられ、これまで同社では、本案件を含め市場から4億2,000万ドルを調達している(「バロール」紙10月9日)。

ヌーバンクは2013年に創業したブラジルのフィンテックの代表的企業だ。既存の金融サービスが行き届かない低所得者層を主な対象に、年会費無料のクレジットカード(マスターカード)を発行、2017年10月からはヌーコンタ(NuConta)と称する金融取引口座の取り扱いも開始した。同社によれば、カード会員数は約400万人、金融取引口座は250万人が開設している。同社のスマートフォンアプリ操作で、銀行振り込みや公共料金の支払いなど基本的な金融取引が完結でき、バーチャル金融機関として存在感を高めている。なお、ヌーバンクのダビド・ベレス代表は出資受け入れに当たり、中国のテンセントの持つ経験を学びたいと目的を語っている。

政府も法制度の整備を進める

ブラジルでのフィンテック企業は近年、成長が著しく、政府も法的安定性を保つため制度整備を進めている。ブラジル中央銀行は2018年4月26日付決議4656号により、「直接的クレジット組織(SCD:sociedade de crédito direto)」および「個人間融資組織(SEP:sociedade de empréstimo entre pessoas)」を認める規則を発表した。

SCDは、自己資本をもとに、電子プラットフォームを介して融資、金融取引、信用権利の取得を行う目的の金融機関(第3条)、SEPは電子プラットフォームを介して個人間の融資、金融取引を行う金融機関だ(第7条)。SEPにおける取引額条件は1万5,000レアル(約45万円、1レアル=約30円)を超えないことと上限が定められている。なお、これらの金融機関の健全性を保つため、SCD、SEPの法人設立形態は株式会社(S.A.:sociedade anônima)として設立する必要があり(第25条)、常に資本金、および純資産は100万レアルを下回らないことと定められている(第26条)。

ブラジルでは、大手金融機関が高い市場シェアを占めており、金利や手数料の高さでは他の市場と異なる特性を有する。ゴールドマン・サックスが2017年5月に発表した報告では、ブラジルに200以上存在するフィンテック企業は、今後10年間で240億ドルの売り上げを生む潜在的可能性があるとしている。

(二宮康史)

(ブラジル、中国)

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